2006 Fiscal Year Annual Research Report
鞭毛の自励振動の基礎となるダイニン滑り活性切り替え機構の解明
Project/Area Number |
05J12026
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
林 周一 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 鞭毛 / ダイニン / 振動 / 屈曲 / 精子 / ウニ |
Research Abstract |
真核生物の鞭毛の振動運動は,ダイニンによる微小管滑り運動が時間的・空間的に制御されることによって生じる.ウニ精子鞭毛の両方向の屈曲形成には,中心小管の両側(7番と3番)の滑りが重要であり,その切り替え制御に鞭毛の屈曲自体が関与することが示唆されているが,実験的な証明はなされていない.これまでの成果に基づくと,除膜してエラスターゼ処理をしたウニ精子鞭毛では,高濃度Ca^<2+>存在下で7番側のダイニンによって2本の束に別れるように滑った軸糸に屈曲を与えた場合,滑り方向の逆転が誘導される.この滑りの切り替えには(1)7番側のダイニンの出す力の向きが逆転する,(2)ダイニンの活性部位が3番側に切り替わる,という二つの仕組みのどちらか一方が関与する可能性と,両方が同時または時間差で関与する可能性がある.平成18年度には,これらの二つの可能性の検討を試みた. (1)について検討するために,細い束と太い束上にそれぞれ露出した7番と3番側のダイニンに重合微小管を作用させて,微小管をガラス微小針で曲げた時に滑り方向が逆転するかどうかを調べたが,逆転した例は観察できなかった.しかし,この実験系を用いて(2)を証明できる可能性に気づき,この系を発展させて以下の結果を得た.細い束,太い束上の重合微小管の滑りの極性は共に一定で,太い束上の微小管の滑り速度は細い束上の速度よりも有意に小さかった.また,軸糸を曲げて滑りの切り替えを誘導した場合,屈曲後の逆方向の滑り速度は順方向の速度よりも有意に小さかった.したがって,屈曲によりダイニン活性部位が7番側から3番側に切り替わったことが示され,屈曲による滑りの切り替えに(2)の仕組みが含まれることが証明された. 平成18年9月に開催された国際シンポジウム(松島),日本動物学会第77回大会(松江)において,軸糸の滑り速度の解析結果とこれまでの成果を合わせて発表した.
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