2007 Fiscal Year Annual Research Report
線虫の成長に伴う神経突起除去における新規転写因子MBR-1の機能の解析
Project/Area Number |
05J12027
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
林 悠 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 線虫 / C.elegans / 神経 / 発生 / 神経突起除去 / axon pruning / 転写 / 嗅覚 |
Research Abstract |
脳の発達過程において、一度形成された神経接続が除去される過程(神経突起の除去)が存在することはよく知られているが、その意義や分子機構に関しては不明な点が多い。本研究では、線虫C.elegansにおいて神経突起除去を初めて見出したことを端緒に、その分子機構の一端を明らかにしてきた。平成20年度は、これまでの成果(新規な転写因子MBR-1が神経突起除去を誘導することの証明)を足がかりに、線虫において神経突起除去の生理的意義と分子機構の解明に取り組んだ。具体的には、昨年度に引き続き、転写因子MBR-1の標的遺伝子の機能解析およびmbr-1変異体の示す行動異常の原因の解析に取り組んだ。 まずMBR-1の標的遺伝子に関しては、昨年度に行った野生株とmbr-1変異体の間でのマイクロアレイ法による遺伝子発現の網羅的比較に加え、in vitroでMBR-1に結合するゲノム領域のスクリーニング(ゲノミックSELEX)も行った。これら2つの方法により得られた候補遺伝子に関して、その既知の機能に着目することで、どのようなシグナルカスケードの遺伝子が多く含まれているかを調べた。その結果、アセチルコリン神経伝達に関わるタンパク質(イオンチャネル型アセチルコリン受容体やメタボトロピックアセチルコリン受容体)や、細胞ストレス依存プログラム細胞死に関わるタンパク質(酸性スフィンゴミエリナーゼやPQN-60)をコードする遺伝子が多く得られていることが判明した。そこで、実際にこれらのシグナルカスケードが神経突起除去に関わっているかを検討した。アセチルコリン神経伝達の関与を調べるには、アセチルコリンの分解を担うアセチルコリンエステラーゼに関して、その変異体で神経突起除去が正常に行われているかを検討した(アセチルコリンエステラーゼの変異体ではアセチルコリン神経伝達が亢進していると予想される)。その結果、アセチルコリンエステラーゼ変異体では神経突起除去が正常に起こっていないことが判明した。また、細胞ストレス依存プログラム細胞死のカスケードの関与を調べるには、細胞ストレス依存プログラム細胞死の中心となるタンパク質P53をコードする遺伝子cep-1の変異体を解析した。すると、cep-1変異体自体には異常が見られなかったが、cep-1;mbr-1二重変異体で はmbr-1変異体に見られた神経突起除去の異常が抑圧されていることが判明した。以上の結果は、MBR-1の標的遺伝子を検索した結果候補となったシグナルカスケードが確かに神経突起除去に関わることを強く示唆するものである。また、mbr-1変異体は嗅覚行動の異常を示すが、細胞特異的レスキュー実験により、この異常はRIFと呼ばれるニューロンの機能ことが判明した。そこでさらに、mbr-1変異体のRIFの形態を観察したところ、RIFでも、従来神経突起除去が起こることが知られてい同様に、MBR-1による神経突起除去が起きていることが判明した。したがって、神経突起除去は機能的な嗅覚回路を形成するの担うことが期待される。以上のように、本研究では線虫を用いて神経突起除去の解析を行うことで、その分子機構および生理的ラ関する知見を得ることができた。 また、mbr-1変異体は嗅覚行動の異常を示すが、細胞特異的レスキュー実験により、この異常はRIFと呼ばれるニューロンの機能ことが判明した。そこでさらに、mbr-1変異体のRIFの形態を観察したところ、RIFでも、従来神経突起除去が起こることが知られてい同様に、MBR-1による神経突起除去が起きていることが判明した。したがって、神経突起除去は機能的な嗅覚回路を形成するの担うことが期待される。以上のように、本研究では線虫を用いて神経突起除去の解析を行うことで、その分子機構および生理的ラ関する知見を得ることができた。
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Research Products
(1 results)