2005 Fiscal Year Annual Research Report
人工遺伝子ネットワークによる細胞内ダイナミクスの包括的解析
Project/Area Number |
05J12029
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
前多 裕介 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | システム生物学 / 非平衡開放系 / 遺伝子ネットワーク / パターン形成 |
Research Abstract |
分子生物学・生化学の発展により、生命現象の分子レベルにおける理解が飛躍的に進んだ。しかしながら、生命現象の本質的理解に至るには分子間相互作用がうむネットワークシステムの理解が必要不可欠である。本研究は生命現象を対象に、(1)遺伝子ネットワークシステムの動作原理解明,(2)非平衡パターン形成生命システムの動作原理解明を目的としている。 (1)遺伝子発現の多重安定性と履歴依存性 数多くの分化現象を司る遺伝子ネットワークには正の制御が見出されている。この制御様式が担うシステム特性が分化にどのような役割を果たすかは明らかではなかった。正の制御をもった人工遺伝子ネットワークを細胞内に構築し、そのシステム特性をダイナミクスの観点から実験的かつ理論的な解明を行った。その結果、遺伝子発現に時間遅れが生じることが明らかとなった。また、遺伝子発現に多重安定性が生まれ、入力シグナルに対して不可逆的な応答を示すことが明らかとなった。更に、この多重安定性はフィードバック活性の大きさに応じて消失しうることが実験的,理論的に示すことに成功した。 (2)E.coliが示す同心円パターンの動的振る舞い ある種のバクテリアはコロニー形成を経て美しいパターンを作り出す。その中でも同心円パターンは種に依らず見出されており、その形成メカニズムには普遍性が内在することが示唆されている。しかしながら、メカニズムは明らかではない。本研究において、E.coliにおいて新奇な同心円パターンが発見された。このパターンは他の種が示す動的振る舞いを見せず、明確な進行と停止による周期的な界面運動を見せないことが明らかとなった。このようなパターンはこれまで見出されておらず、パターン形成の物理学の観点からも重要な発見といえる。今後の研究によってその動的システムを解明し、普遍的なメカニズムを明らかにしてゆく。
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Research Products
(1 results)