2005 Fiscal Year Annual Research Report
担子菌のセルロース分解様式の多様性を制御する因子の解析
Project/Area Number |
05J12064
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加治佐 平 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 褐色腐朽菌 / Coniophora puteana / 糖質加水分解酵素ファミリー7(Cel7) / 糖結合性ドメイン / 結晶性セルロース |
Research Abstract |
担子菌のセルロース分解様式は、菌によって多様性があることがわかっている。これまで白色腐朽型のセルロース分解様式についての研究は盛んに行われてきたが、褐色腐朽型のセルロース分解様式についての研究は限られている。そこで、褐色腐朽菌のセルロース分解機構について研究を進めていくことで、担子菌のセルロース分解様式の多様性を決める酵素は何か、またその酵素の構造と機能にどのような差異があるのかを明らかにすることを本年度の研究の目的とした。 我々は糖質加水分解酵素ファミリー7に属する酵素(Cel7)に着目した。褐色腐朽菌Coniophora puteanaはCel7をセルロースを炭素源とした培養系において主な菌体外酵素として生産するが、精製したC.puteana由来Cel7は結晶性セルロースを分解することができなかった。さらに酵素学的、分子生物学的の両面から解析することによって他の結晶性セルロースを分解することのできる白色腐朽菌、または糸状菌由来Cel7と比較した。その結果、糸状菌、白色腐朽菌由来の結晶性セルロースを効率よく分解できるCel7との最も大きな差異は固体のセルロースに吸着する機能を持つ、糖結合性ドメインがC.puteanaには欠如していることが明らかとなった。さらにC.puteana由来Cel7はこれまでに単離されたCel7とは異なり、キシランやグルコマンナンといったヘミセルロースに対して高い活性を示すことを明らかにした。ヘミセルロースに高い活性を示すCel7はこれまでに報告されていない。また、12種類の担子菌よりCel7遺伝子のスクリーニングを試みたところ、白色腐朽菌においては全ての菌よりCel7遺伝子をスクリーニングすることに成功したが、C.puteanaを除き、全ての褐色腐朽菌においてCel7遺伝子の存在を確認することはできなかった。このことから担子菌のセルロース分解様式の多様性を決める因子の一つとして、担子菌にはCel7の有無、特性にバリエーションが存在する可能性が示唆された。
|