2007 Fiscal Year Annual Research Report
低酸素環境適応機構における自律神経系機能の役割と意義に関する研究
Project/Area Number |
05J12073
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川口 友浩 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 低酸素 / テレメトリー法 / 自律神経 / 末梢化学受容器 / 心拍変動解析 |
Research Abstract |
昨年度では低酸素環境における交感神経および副交感神経の働きを明らかにした。10%低酸素環境に対する生体反応は末梢化学受容器からの求心性情報が延髄において中枢化学受容器からの情報と統合され、最終的には交感神経および副交感神経の遠心路を介して呼吸循環系の調節を行っていると考えられる。そのため本年度は、頸動脈洞神経・大動脈神経切除術(SAD)を用い、末梢化学受容器からめ求心性入力を遮断することで、低酸素環境下での生体抑制反応における末梢化学受容器からの求心性入力の役割を明らかにすることを目的とした。SAD手術5日後、テレメトリー送信機を埋め込み、ラットの心拍数、血圧、体温および活動量を測定し、血圧・心拍変動解析を行い自律神経系の活動を評価した。1週間の回復後、意識下においてコントロール記録を取った後、10%低酸素に24時間曝露した。また、ウレタン麻酔下で40分間の10%低酸素曝露に対する心拍数、血圧および呼吸数の変化を測定した。SADによって低酸素曝露前の各指標に差はみられなかった。意識下において低酸素曝露後1時間より心拍数、体温、活動量およびHF peak frquency(HFF:呼吸頻度の指標)の低下が起きる。この抑制反応はSADによってさらに深くなり、延長した。この際にHF(副交感神経機能の指標)が増大していた。抑制反応の際の心拍数とHFFの変化に強い相関がみられた。麻酔下の実験では、SADによって低酸素曝露による呼吸数の増加は有意に抑制され、Sham群で認められた心拍数減少の回復が認められなかった。低酸素曝露における体温低下および心拍数減少の抑制には呼吸数の減少と副交感神経系機能の亢進が関与していることが示唆され、低酸素環境における末梢化学受容器からの求心性入力刺激は体温低下、心拍数減少の際に、それに対抗して体温、心拍数を維持しようとする働きをしていることが示唆された。
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