2006 Fiscal Year Annual Research Report
リゾホスファチジン酸産生酵素リゾホスホリパーゼDの個体レベルにおける機能の解析
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05J12099
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 将之 東京大学, 大学院薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | リゾホスファチジン酸 / リゾホスホリパーゼD / 血管形成 / 脳腫瘍 |
Research Abstract |
リゾホスファチジン酸(LPA)産生酵素リゾホスホリパーゼD (lysoPLD)のノックアウトマウスは胎生10.5日目で胎生致死となる。ノックアウトマウスは胎仔や卵黄嚢、胎盤といった組織における血管の形成異常を示す。以上のことを、採用第1年度に明らかにしていた。 採用第2年目となる本年度は、本酵素のノックアウトマウスが示す血管形成の異常をより詳細に解析した。まず、lysoPLDが血管内皮細胞に直接作用するかどうかを確認するため、in vitroの系で検証した。胎生8.5日目の尿膜は血管内皮細胞で構成される組織で、血清存在下で一晩培養すると血管構造を形成する。血管構造を形成させたあとに培地を置換して更に一晩培養を行うと、lysoPLDやLPAに血管構造を維持する活性が認められた。既知のLPA受容体ノックアウトマウスには血管形成の異常は認められず、これらの受容体が血管内皮細胞に発現していないことも確認している。従って、lysoPLDの作用を仲介する未同定のLPA受容体の存在が示唆された。 また、これまでの解析から、本酵素が悪性脳腫瘍に高発現していることを見出していたので、細胞レベルの解析をさらに進めた。内在性のlysoPLDを発現していないマウス脳腫瘍由来培養細胞203gにlysoPLDを強制発現させ、定法に従ってネオマイシンによる薬剤選択をおこない安定発現株を得た。その結果、コントロールの親細胞株に比べて細胞遊走活性が向上していた。さらに、内在性のlysoPLDを発現しているヒト脳腫瘍由来培養細胞SNB78に対し、RNAi法によりlysoPLD発現抑制を行うと、細胞運動性が低下した。以上の結果は、lysoPLDが脳腫瘍の悪性度を高めている可能性を示唆するものである。
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Research Products
(4 results)