2005 Fiscal Year Annual Research Report
カニクイザル微小血管閉塞脳虚血モデルの開発と遺伝子治療へ向けた基盤研究
Project/Area Number |
05J12124
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 祐樹 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 脳梗塞 / 脳虚血 / 霊長類 / カニクイザル / 白質病変 / アストロサイト / ニューロン / DNA修復 |
Research Abstract |
カニクイザルを用いて、灰白質の微小血管を閉塞させる脳虚血モデル(ローズベンガルを用いたモデル)および白質の微小血管を閉塞させるモデル(ラクナ梗塞モデル)の確立を試み、MRI撮影や組織解析により、実際にモデルが作製できたことを確認した。ローズベンガルを用いたモデルについては、マウスにおける同様のモデルとの比較研究を重ね、サルではマウスに比べ虚血後の脳白質におけるリアクティブ・アストロサイトの活性化が顕著であることがわかった。アストロサイト活性化部位では、梗塞巣の外側であるにも関わらず、ミエリンへのダメージが観察された。また、ラクナ梗塞モデルにおいても、非常に広範囲に渡る白質傷害が引き起こされることがわかった。これらの結果は、霊長類とげっ歯類の間における白質のボリュームや構造の差が原因と考えられ、ヒトの脳梗塞における白質病変を理解していく上で重要な知見と考えられる。 さらに、このような白質病変とは別に、梗塞部位と健常部位の境界領域においては、核内増殖抗原(PCNA)とDNAリガーゼIVを共に発現している細胞が多数観察され、その中に成熟した神経細胞も見られた。これらはDNA修復中の細胞であると考えられる。長期的に見れば、DNA修復を受けたこれらの細胞が必ずしも生き残るとは限らないが、今後、DNA修復を受けた神経細胞を生存させることができれば、大脳新皮質における疾患の治療に役立つであろう。さらに、本研究で得られた結果は、虚血後の神経細胞の新生をより正確に検出する助けとなる可能性もある。
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