2006 Fiscal Year Annual Research Report
カニクイザル微小血管閉塞脳虚血モデルの開発と遺伝子治療へ向けた基盤研究
Project/Area Number |
05J12124
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 祐樹 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 脳梗塞 / 脳虚血 / 霊長類 / カニクイザル / 白質病変 / アストロサイト / ニューロン / MRI |
Research Abstract |
前年度までに確立した疾患モデル(カニクイザルを用いた微小脳梗塞モデル2種類:灰白質の微小血管を閉塞させる脳虚血モデルおよび白質の微小血管を閉塞させるモデル)を受け、今年度はそれらのモデルを用いた脳の白質障害の解析をさらに進展させた。白質の病態変化は、近年、アルツハイマー型および脳血管性の認知症にも深く関与することが指摘されはじめたものである。 今年度は、これまでの免疫組織化学的な手法を用いた病理解析に加え、MRI拡散テンソルによる拡散異方性(FA)解析や電子顕微鏡を用いた詳細な組織構造の観察も行った。その結果、通常のMRI (T2強調画像)では変化の見られない脳梁正中部や大脳脚にまで及ぶ広範囲の白質変性が生じていることが判明した。 また、新たな発見として、本研究で用いた疾患モデルの病変周囲に出現するリアクティブ・アストロサイトが、軸索束の変性あるいは再ミエリン化に寄与すると考えられる種々のサイトカイン(インターフェロンγ、インターロイキン11)を発現していたことを確認した。これらのアストロサイトは脳梗塞後1ヶ月以上に渡って顕著に活性化しており、サイトカインの分泌状態を制御することによって、脳疾患後のミエリン再生が実現する可能性が示めされた。 以上のように、MRIおよび組織解析の双方向から霊長類における初期白質障害の実態が明らかとなりつつあり、本研究が今後ヒトの脳梗塞における白質病変を早期に診断・治療していくための基盤作りに貢献できる可能性がある。
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