2005 Fiscal Year Annual Research Report
運動が脳内情報処理過程に及ぼす影響-至適運動強度・運動時間の検討-
Project/Area Number |
05J50142
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
紙上 敬太 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 事象関連電位(ERP) / 認知機能 / 運動強度 / 運動時間 / 脳 / 有酸素トレーニング |
Research Abstract |
ヒトの高次脳機能を非侵襲的に調べる有効な指標である事象関連電位(ERP)を用いて,運動と認知処理過程の関係を調査した研究では,運動が脳内情報処理過程に影響を与えるということに関しては見解が一致しているものの,その影響の現れ方に関しては一貫した知見が得られていない.そこで,我々は以下に示す4つの課題を設定し,運動と認知処理過程の関係を明らかにするため,ERPを用いて詳細な検討を行った. 1.被験者の体力違いによる至的運動強度の検討 被験者を体力の高い群と低い群に分け,体力の違いによる至的運動強度の検討を行った.その結果,低体力群は高体力群に比べ,運動強度の変化に対してより敏感に反応し,比較的高い強度になると低体力群においてのみ運動の促進効果は打ち消されることが示唆された. 2.運動効果の持続時間の検討 中等度強度の運動直後にはこれまでと同様に認知機能の促進効果が観察されたが,心拍数が安静時の値に戻った30分後にはその促進効果が消失していることが明らかとなった. 3.運動のトレーニング効果の検討 高齢者を対象に12週間の有酸素トレーニング(ウォーキング)が認知処理過程に及ぼす影響を検討した.その結果,12週間程度の比較的短い期間であっても,認知処理過程に改善傾向が現れ始めることが示唆された. 4.運動の強度と時間の相互関係の検討 低強度運動〜高強度運動,短時間運動〜長時間運動をそれぞれ検討したところ,低強度運動では時間に関係なく,認知機能の促進効果はみられなかった.強度が中等度以上の場合は,比較的短時間の運動であっても促進効果が現れ始めるが,時間が延長するにつれ疲労とともにその促進効果は打ち消されることが示唆された. 本研究で得られた知見は快適な運動強度を規定する上で重要な基礎データとなり,将来,運動能力特性に基づく運動プログラムの開発に活用できるものと考えられる.
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Research Products
(5 results)