2005 Fiscal Year Annual Research Report
組合せ的凸多面体論と最適化を応用した量子状態の非局所性に基づく分類手法の開拓
Project/Area Number |
05J50212
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 剛志 東京大学, 大学院・情報理工学系研究科, 博士課程2年
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Keywords | Bell不等式 / 非局所性 / 量子情報処理 / 凸多面体的組合せ論 / 数値最適化 |
Research Abstract |
Bell不等式は量子状態の非局所性を定める重要概念である。Bell不等式は相関多面体と呼ばれる凸多面体の面に対応することが知られている。中でもCHSH不等式は最初に見つかった実験的に確認可能なBell不等式で、1982年のAspectの実験ではCHSH不等式の破れを測定することで量子状態の非局所性が実験的に初めて確認された。一方、CHSH不等式では検出できないような非局所性を検出することができる「CHSH不等式より強いBell不等式」が存在することが知られている。しかし、Werner状態と呼ばれる対称性の高い量子状態に対してCHSH不等式より強いBell不等式が存在するかどうかはわかっていない。 本研究では、相関多面体と組合せ最適化の分野でよく調べられているカット多面体の関係に着目し、カット多面体のファセットから非冗長なBell不等式を構成する手続きである三角消去を提案した。この手続きによりカット多面体の既知のファセットから2億個以上の非冗長なBell不等式を構成できることを示した。さらに非冗長なBell不等式の一部を表す一般式を導出し、Bell不等式の間の包含関係と名付けた組合せ的性質を調べた。 また、三角消去によって構成されたBell不等式のWerner状態での破れを数値最適化で調べることにより、Werner状態に対してCHSH不等式より強いBell不等式が存在するかどうかを調べたところ、そのような不等式が存在しないことを示唆する結果が得られた。一方、Werner状態の3準位系への拡張である3準位等方的状態について同様の計算実験をし、その結果とBell不等式の間の包含関係に関する考察を合わせることによって、3準位等方的状態ではWerner状態と違い、CHSH不等式より強いBell不等式が存在することを示した。
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Research Products
(2 results)