2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J50242
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
ワルド R 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 浄土真宗 / 近代仏教史 / 近代宗教史 / 異安心問題 / 村上専精 / 『仏教統一論』 / 清沢満之 / 西本願寺 |
Research Abstract |
近世から近代にかけて、浄土真宗教団内で生じた「異安心問題」(異端問題)に焦点を与えることによって、日本近代仏教史における「近代と伝統の衝突」を解明することを研究目的としている。本年度では、村上専精という東本願寺僧侶かつ帝国大学の教授の革新的な『仏教統一論』という書物が引き起こした教学論争に注目することによって、東本願寺で生じた「近代教学者」と「保守派・伝統教学者」との葛藤(つまり、異安心問題)についての研究を進めた。厳密にいえば、村上は「異安心」までいたらなかったが、一時期僧籍を離脱している。彼が「伝統教学者」に非難されたのは、非伝統的近代的な浄土解釈や大乗非仏説肯定論という思想的要因があったためのみならず、清沢満之による東本願寺教団改革運動を支持していたという政治的背景にも注目しなければならないと論じ、こうした両側面が、「伝統教学者」による彼への攻撃の大きな要因であったということを提示した。また、いくつかの新資料の発見によって、村上の晩年では、興味深いことに、かれは『仏教統一論』にみられる「近代的思惟」を自ら批判し、一種の「伝統主義」に立ち帰ろうとしていたことを明らかにした。この思想的転換に示されているように、近代における「伝統教学者」と「近代教学者」の衝突は従来、筆者が認識していたより一層複雑な側面をはらみ、この両者の間に行き来する仏教思想家も存在していたことが明らかになった。
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Research Products
(1 results)