Research Abstract |
中国語の動詞重畳形は,これまで現代漢語のアスペクト体系の中で動作量が少ないことを表し,また,重畳可能な動詞の範囲については,重畳不可能な動詞は,「恒久的なもの,不変な動作・行為」を表す動詞であり,それに対して,動詞の表す動作が,動作主体が動作に対するコントロールが可能であれば,重畳可能であるとされている。こうした考えは,基本的に今日の研究まで,受け継がれている。 動詞の直後におかれる"了"は,「完了」と「実現」の両方を表しうるのだが,本研究では,"V了V"中の"了"は,「完了」ではなく「実現」を表していると仮定して,その仮説の検証を試みた。本研究では、動詞重畳形の文法的な意味を「出来事が一定時間持続した後,出来事の主体が自ら終結が可能であることを表す」と,前提して議論を進めた。 本研究では,『漢語動詞用法詞典』に記述されている1266個の動詞のうち,動詞重畳形の記述がある800個の動詞を対象に研究を行った。この800個の動詞は持続可能で,動詞重畳形を作りうるので,"V了V"を最も成立させやすい動詞である。これらの動詞について,"V了V"を成立可能か否かを,検索エンジンGoogleを用いて調査した。検索には,Googleの簡体字版(http://www.google.com/intl/zh-CN/)で,簡体字で書かれたページについて,完全一致検索をした。Googleでの検索結果を『漢語動詞用法詞典』の動詞の意味記述を参照しながら,ふさわしいか否かを判断し,その動詞にふさわしい用例をURL(Universal Resource Locator)とともに1つずつデータベースに入力した。その結果は,800個の動詞のうち,"V了V"に生起しうる動詞は692個あり,用例を確認できなかった動詞は108個であった。 用例を分析した結果,"V了V"では,動詞直後の"了"が動詞の表す動作の開始点への達成を表し,「予想される動作の完了以前の動作の終結を表している」と結論づけた。
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