2005 Fiscal Year Annual Research Report
民主化の人類学:「自主管理」時代を生きるベトナムの村落住民
Project/Area Number |
05J50682
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
加藤 敦典 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 文化人類学 / 民族誌 / ベトナム / 民主主義 / 村落共同体 |
Research Abstract |
近年のベトナムにおいて、村落民主化論に関連して登場した「自主管理」のイデオロギーを、ベトナムの政治思想史に位置づけ分析するため、1950年代の「集団主人公」論から近年の村落民主化政策にいたる、地域住民の主体形成に関する政策資料を分析した。また、村落における自主管理の実践を考察するため、2002年からベトナム・ハティン省で実施している住民自治に関する村落調査の資料にあわせ、11月に同地域で実施した落花生貯蔵販売センターの活動、および「連家組」とよばれる隣組的な互助組織の調査結果をまとめ、「ポスト・ユートピア」という観点から分析した。その結果、計画社会の建設構想の「あと」に文脈づけられる自主管理のイデオロギーと実践が、現在の村落共同体政治の土台となっていることが明らかになった。以上の研究成果を5月の日本文化人類学会、11月のシンポジウム「ポスト・ユートピアの民族誌」で口頭発表し、論文を報告書『ポスト・ユートピアの民族誌』に寄稿した。 また、文化人類学における民主主義研究の動向を「臨床性」という観点から整理し、非専門家としての現地住民に民族誌の作成技術を開放しようとする、人類学者J.パレイによる「民族誌の民主化」の試みの可能性と困難を考察した。その内容を論文にまとめ、『インターフェイスの人文学-2005年度<若手研究集合>報告書』に寄稿した。 2006年2-3月には、ハノイ市とハティン省で民事紛争の住民自主調停制度「和解組」についての調査を実施した。司法省職員、地方行政官、集落リーダー等へのインタヴューにより、和解組制度の変遷や具体的な調停事例についてのデータを収集し、来年度の研究の予備的資料として整理した。また、調査村のモノグラフ作成のため、家譜などの古文書資料をデジタル記録化した。 そのほか、戒能通厚氏(早稲田大学)主催の科研費特定領域研究の研究会において和解組制度の実状を報告し、宮澤千尋氏(南山大学)らと意見交換をした。
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