2006 Fiscal Year Annual Research Report
民主化の人類学:「自主管理」時代を生きるベトナムの村落住民
Project/Area Number |
05J50682
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
加藤 敦典 大阪大学, 大学院・人間科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 文化人類学 / ベトナム / 農村 / ADR / 民族誌 / 民主主義 / 自主管理 / 小規模金融 |
Research Abstract |
1.ベトナムの村落における和解組制度(民事紛争の自主調停)を支える文化的背景についてまとめ、科研費特定領域研究「アジア法整備支援一体制移行国に対する法整備支援のパラダイム構築」(研究代表者:戒能通厚教授)の報告書に論文を寄稿した。論文では、和解組の実践が、法社会学や法人類学が想定するような社会的規範に支えられているだけでなく、ベトナムの国家行政から村落自治にまで浸透する丁民の問題で官を煩わせない」という行政文化によっても支えられていることを論じた。 2.大阪大学COE「インターフェイスの人文学」の枠組みを利用し、「もめごとの解決」をテーマとしたセミナーを企画し、11月に大阪大学で開催した。同セミナーではCOE内の「臨床と対話」班(臨床哲学系)と「トランスナショナリティ研究」班(文化人類学系)のコラボレーションを試みた。講師に学振特別研究員の石田慎一郎氏を招聰し、石田氏の講演「ADRの技術移転と多元的法体制の再編」を中心に討議をおこなった。講演と討議の記録はCOEのHPに掲載されている。 3.11月よりベトナムのハノイとハティン省で約1ヶ月の現地調査を実施した。当初は夏期休業中に実施する予定だったが、面会予定者の都合により時期を変更した。和解組制度のデータはすでに十分に集まっていることが明らかになったので、この調査では、和解組制度と同様、住民の民主的「自主管理」を促す制度として、村落小規模金融制度について調査した。また、ベトナムにおける農村社会学の第一人者であるベトナム社会科学院To Duy Hop教授と意見交換をおこなった。 4.上記COEのテーマである臨床場面における人文学的な知の活用という観点から、民主主義についての民族誌的研究の可能性についてレヴューし、COE研究成果報告書に「活動中の民主主義のために」と題した論考を寄稿した。
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