2005 Fiscal Year Annual Research Report
研究者の心的状況と電子メディア利用に関する統合的研究
Project/Area Number |
05J50942
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
三根 慎二 慶應義塾大学, 文学研究科・DC2(特別研究員)
|
Keywords | 研究者 / 研究活動 / 読み / 学術論文 / 電子ジャーナル / 電子メディア / 印刷メディア / 眼球運動 |
Research Abstract |
本研究は,近年急速に普及している電子ジャーナルを研究者がどのように読んでいるのかおよびその際の心的状況を実証的に明らかにすることを目的としている。本年度は,まず研究者の学術論文の読みの実態を明らかにするために,心理学,図書館情報学,書誌学の研究者五名に対して,眼球運動測定,観察,インタビューによる実験を行った。 調査方法 眼球運動測定では,被験者に24インチの大型ディスプレイに表示された電子ジャーナル,それと同じ大きさに合わせた紙の学術論文それぞれ1編見開き2ページを読んでもらった。観察では,電子ジャーナルと紙の学術論文を通常通り読んでもらい,その様子をディスプレイのキャプチャリングとビデオテープとによって録画し,インタビューによって各種行動時における目的や感情などを聞いた。 研究成果 眼球運動測定の結果からは,紙の学術論文と電子ジャーナルとで,停留時間,停留回数,視線の移動距離,視線の軌跡などについて,眼球運動という観点からは大差はなく,どちらの媒体においても大差なく学術論文を読むことができることがわかった。両媒体ともに,論文の構成を確認しながらタイトル,アブストラクト,本文といったように順次的に読んでおり,読み飛ばしや段落やパラグラフ単位で大きく逆行し読み返すということはなかった。 また,観察とインタビューの結果からは,電子ジャーナルを画面上で読むことは好まれない傾向が見受けられた。画面上での読みを行っている研究者の存在を指摘するものもあるが,電子ジャーナルの1)リンク機能の不十分さ,2)注釈機能の欠如あるいは不足,3)スクロールの遅さが被験者にとって画面上の読みを妨げている。現時点では,紙の学術論文を読む際の方略を電子ジャーナルを読む際にも適応しようとしており,後者に特有の読み方を駆使しているわけではないことがわかった。
|