2006 Fiscal Year Annual Research Report
研究者の心的状況と電子メディア利用に関する統合的研究
Project/Area Number |
05J50942
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
三根 慎二 慶應義塾大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 研究者 / 研究活動 / 読み方 / 学術論文 / 電子ジャーナル / 電子メディア / 印刷メディア / 眼球運動 |
Research Abstract |
平成18年度は,17年度に引き続き,研究者の電子ジャーナルおよび紙の学術論文の読みの分析を行った。昨年度のデータに基づきながら,学術論文が電子化することの意味を研究者の行動レベルから捉えることを目的として,新たに質的分析を通して,1)現在の電子ジャーナルの表示方法が紙の論文と比較してどの程度研究者の読み方に対応しているかを明らかにし,2)画面上での読みを促す表示方法を提案した。 電子ジャーナルと紙の論文における読み方の違い:両媒体ともに,まず論文のタイトルと著者名を確認し,最初からべったりと読むことはないことは共通している。しかしその後,紙の論文においてはしばらくの間,論文をめくり前後を行き来しながら,論文が何をやっているか,どの辺が中核になってくるかといった論文の「メタ知識」を得ることで論文の品定めをしている。被験者の分野・専門領域によって2パターン,1)順序に沿った読み,2)選択的な読みが見られた。一方,電子ジャーナルの場合においては,画面上で読む場合,ページを行き来して論文全体の構造を確認することはなく,最初から最後まで順に沿って全てを読むことはほとんどない。全体に目を通すことは無く,紙の論文においては高頻度行われていた引用文献の確認もほとんど見られず,論文の特定箇所,他の論文で言及されていた最も関連する部分や図を確認するだけで画面上での読みは終了することが,全被験者に共通していた。 電子ジャーナルの表示形式の問題点と改善点:技術的側面で現在の電子ジャーナルの表示形式は,以下の三点,1)リンクとスクロール作業の煩わしさ,2)一覧性の欠如,3)注釈において,紙の論文を読む際に満たされている条件を兼ね備えていないことがわかった。電子ジャーナルの表示の改善点として,画面上の読みにおける基本的作業の操作性向上,2)論文のモジュール化と部分的提供を提案した。
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Research Products
(1 results)