2006 Fiscal Year Annual Research Report
リッチ曲率が下に有界な多様体のグロモフ-ハウスドルフ極限の位相・幾何構造の解明
Project/Area Number |
05J52082
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
渡辺 正芳 東北大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | リーマン幾何学 / リーマン多様体 / リッチ曲率 / グロモフ-ハウスドルフ収束 / 測度距離空間 / アレキサンドロフ空間 / 最適輸送問題 |
Research Abstract |
グロモフ・ハウスドルフ収束の一例として、トーラスを細くしていくと円周につぶれる(崩壊する)例が挙げられる。リッチ曲率が一様に下に有界なリーマン多様体の例を考えた場合(曲率を下から押さえることは自然である)、グロモフ・ハウスドルフ極限空間はもはや多様体とは限らず、非常に複雑な構造を持ち得る。このような極限空間の構造を理解することがひとつの研究目的である。 最近、John Lott、太田慎一、Karl-Theodor Strum、Cedric Villaniらによって一般の測度距離空間に対するリッチ曲率の下限が定義された。定義は一見複雑で、「砂の山をある場所を移す最適な方法を求めよ」という最適輸送問題に由来する確率論的アイディアを用いている。リッチ曲率が下に有界な多様体の極限空間は、たとえ崩壊が起きても、自然な測度によってリッチ曲率が下に有界な測度距離空間となる。 我々は、切断点と呼ばれる、その点を取り除くことで空間が非連結になるような点に着目し、リッチ曲率が下に有界な測度距離空間における切断点の振る舞いを考察した。その応用として、非負リッチ曲率の測度距離空間のエンドは高々2個であることを示した。リーマン多様体の場合の証明法とは異なることを注意したい。 断面曲率が下に有界な多様体の拡張であるアレキサンドロフ空間がリッチ曲率が下に有界な測度距離空間であるか?は最も重要かつ興味深い未解決問題のひとつである。解決のためにはアレキサンドロフ空間における最適輸送問題の研究が必要であり、今後の課題である。
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