2006 Fiscal Year Annual Research Report
武力紛争下の人道主義の思想と実践:人間の安全保障とジェンダーの観点から
Project/Area Number |
05J52132
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
上野 友也 東北大学, 大学院法学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ジェンダー / 人間の安全保障 / 人道主義 / 人道支援 |
Research Abstract |
本研究では、人間の安全保障とジェンダーの観点から武力紛争下の人道主義の思想と実践について考察してきた。平成18年度では、武力紛争下の人道支援の実践的・歴史的課題と人道主義の思想における平等と許容される不平等に関してジェンダーの観点から議論を展開した。第一に、武力紛争下の人道支援において被災者を救済する人道支援機関の職員を紛争当事者からの干渉からいかに保護するかという「保護者の保護」の問題に関して議論した。この中で、人道支援職員に乖離を起因とし、冷戦終結以後はその乖離が拡大することで干渉の規模が拡大したことを解明した。第二に、武力紛争下の人道支援に関する歴史的考察について主権国家体制の確立と戦争体制の変容という観点から分析を加えた。人道支援機関と国家との間には人道支援をめぐる補充関係と緊張関係が存在し、とくに人道支援機関が戦争を抑制する主体として機能することで、国家の戦争における自由裁量の範囲が狭まってきたことを解明した。第三に、武力紛争下の人道支援における被災者の保護について、女性が特別に保護される主体として国際人道法上位置づけられているのか否かについて検証し、国際人道法上の女性に対する積極的差別是正とその取られた背景を解明し、男性に対する不利な差別が取られていないかについて評価した。女性は性的虐待と拘禁に関して特別な反故の地位を与えられており、これは第二次世界大戦での女性に対する熾烈な暴力が契機となっている。しかし、女性兵士の急増もセクシャリティの多様化に伴って国際人道法の規定が時代にそぐわない部分が生じてきた点も明らかにした。
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Research Products
(4 results)