2005 Fiscal Year Annual Research Report
多文化世界における市民意識の動態-南北朝鮮の市民意識-
Project/Area Number |
05J53092
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
礒崎 敦仁 慶應義塾大学, 法学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 北朝鮮 |
Research Abstract |
平成17年度は、これまでに採り上げられることの少なかった北朝鮮住民の意識について、『労働新聞』等の第一次資料の検討をもとに、脱北者に対する聞き取り調査を行いつつ、その結果を学会の場で発表した。 また、金日成死去後の北朝鮮政治体制について、住民社会の動態も交えて考察した論文を共著出版した。ここでは「苦難の行軍」と呼ばれる未曾有の経済難から「強盛大国」という新たな経済建設ビジョンを打ち立てた同国の変容ぶりを取り扱った。 さらに、今後の研究の前提となる先行研究の整理に関する報告を学術雑誌に掲載した。ここでは従来の北朝鮮政治体制研究における問題点を挙げ、住民社会・意識の視点を織り交ぜながらいかに客観的な検証ができるかにつき、伝統的な全体主義論とともにJ.リンスの「スルタン主義」概念を導入することの意義について試論を行った。 そのほか、今年度の研究について所属研究機関の報告書に三篇の論文を提出したほか、二回の国際シンポジウムで口頭発表を行った。テーマは北朝鮮社会において「多元主義」が抑制されてきた歴史的過程を振り返ったものや、現在キーワードとなっている「先軍政治」概念の検証を中心とした。 いずれの成果も、特定の政治的社会的指導者層を主たる分析対象としてきた従来型研究に対する一つの問題提起であり、日本にとって隣国である北朝鮮の住民がいかなる政治意識を持っているかを把握することは北東アジア地域の平和と安定という観点から重要であるとの前提に立って行ったものである。
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Research Products
(2 results)