2006 Fiscal Year Annual Research Report
ブレインワールドシナリオに基づく自然な宇宙モデルの構築
Project/Area Number |
05J53192
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
高水 裕一 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ブレイン宇宙 / ブレイン衝突 / ドメインウォール / ブラックブレイン / 高次元 / 次元問題 |
Research Abstract |
ドメインウォールを用いたブレイン衝突モデルについて研究した。湯川結合によってこのドメインウォール上に拘束されたフェルミオン場を組み込むができる。ブレインモデルはその上に通常の標準粒子が拘束されているものを考えているので、衝突過程によってこのフェルミオン場がどのような影響をうけるかを研究することは重要である。時空がミンコフスキーの簡単な場合として解析し、ブレイン上に拘束されていたフェルミオン場の数密度の時間変化をみた。結果は、余剰次元方向に逃げるモードは初速度が大きいほど、こぼれていきやすいことがわかった。さらに反対のブレインにどれほどが移るかは、片側のブレインにのみフェルミオンがあり、もう一方は真空ブレインのときには、その衝突にかかる時間と結合の強さの周期関数であることが分かった。これに対し両側のブレインに同量のフェルミオンがある場合は、これらのパラメータに関係なく衝突後も等量が両ブレインに残ったままであった。これは、フェルミオンとして同じ低エネルギーのものをまず簡単な場合として考慮したためである。この高エネルギーの場合の解析は今後の課題であるが、この効果で宇宙のバリオン非対称性、つまりは物質の起源をめぐる初期宇宙の重要な問題にせまれる可能性を含んでいる。さらに自己重力を考えた場合の衝突についても議論した。衛藤らの自己重力も含めたドメインウォール解をもちいて解析した。ドメインウォールの衝突は、重力の影響がかなり小さい時は、以前のミンコフスキーでの振舞いとほとんど変わらないが、影響が大きくなると、衝突により生成された場の揺らぎが不安定になることがわかった。これにより衝突後、この宇宙モデルでは特異点が形成されてしまうこともわかった。また衝突による宇宙の発展の仕方も、このモデルでは期待していたビッグバン宇宙にはつながらないことがわかった。しかし、この研究により重力の効果で今までのブレイン衝突の描像は大きく変わり衝突で高次元のブラックホールが生成される可能性があることがわかった。時空の効果が大きい場合や、ウォールの速度が大きい場合は特異点が現れ、この現れ方から特異点が地平線で被われたブラックホールができたとわかる。これはブラックブレインと呼ばれ、これらが進化し長くなるとGL不安定性という不安定性をおこし細かくちぎれた高次元ブラックホールが多くできる可能性を示した。このブラックブレイン形成は他にも新井らの5次元BPSという安定なブレイン解でも同様にできる一般的なことであることも示した。これ以外にも宇宙初期のブレイン衝突により次元問題を解決するモデルについても研究した。基本的なアイデアは10次元中のストリングの衝突によって4次元時空が膨張、残りがコンパクトなままというものである。このシナリオではストリングの熱平衡性が重要であった。しかし、この熱平衡の仮定が実は保たれていないことが指摘されていた。そこで本研究ではこの熱平衡性をどのように実現するかを考察した。
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Research Products
(3 results)