2005 Fiscal Year Annual Research Report
太古代から原生代前期までの海水組成進化ー流体包有物を用いた手法の開発ー
Project/Area Number |
05J54112
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
澁谷 岳造 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 液体包有物 / 塩濃度 / 太古代 / 海水組成 |
Research Abstract |
太古代の海水組成を見積もることは初期地球の表層環境を議論するうえで非常に重要である。近年、太古代発泡溶岩の空隙を埋める石英中の流体包有物から太古代の海水組成が議論され始めた。一般に海底熱水系の沈殿物である発泡溶岩の空隙を埋める石英には多くの流体包有物が含まれている。流体包有物は海水成分と熱水成分の混合であるため、その混合のトレンドから海水組成を見積もることが可能であると考えられる。しかし、既存の手法では技術的に溶存ガスを測定することができない。さらに、流体包有物の二酸化炭素濃度は低いため無視できると解釈されてきた。もし、流体包有物の二酸化炭素濃度が高いとすると、これまでの流体包有物の研究において化学組成の見積もりが間違っている可能性がある。そこで本研究では溶存ガスを測定する手法を開発中である。32億年前の海洋地殻中に存在する発泡溶岩の空隙を埋める石英や石英脈10試料から分析用チップを作成し、顕微鏡観察により初生的な流体包有物を二次的な流体包有物を分類した。いくつかの流体包有物は常温で3相に分離しており二酸化炭素の液相が確認された。これは流体包有物の二酸化炭素濃度が非常に高いことを意味している。さらに、冷却加熱台を用いて初生的な流体包有物の均質化温度と氷点を測定した。その温度は111度から311度であり頻度分布のピークは約150度であった。その頻度分布から、ホストの石英にトラップされた流体は、相分離を起こしていたことを示唆している。これは、海底下で上昇する熱水が急激に減圧したためであると考えられる。また、氷点は-8.5から0度であり見かけの塩濃度は0から16wt%であり、ピークは約10wt%であった。これは、現在の海水の塩濃度(3.5wt%)よりの3倍ほどであった。今後は、現在開発中のレーザーラマンを用いた手法を用いて二酸化炭素濃度の定量測定を行う。
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