2005 Fiscal Year Annual Research Report
植物ワックスの炭素安定同位体比を用いた冷温帯落葉広葉樹林における同位体分別の評価
Project/Area Number |
05J54152
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
近藤 美由紀 岐阜大学, 大学院・連合農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 炭素安定同位体比 / 同位体分別 / 植物ワックス / 冷温帯落葉広葉樹林 |
Research Abstract |
本研究では、森林内の大気エアロゾル中に含まれる植物由来のワックスの炭素安定同位体比(δ^<13>C)を用いて、冷温帯落葉広葉樹林における生態系レベルでの同位体分別(Δ)値の変動を評価し、生態系レベルでのΔ値の評価に植物ワックスバイオマーカーのδ^<13>C値が利用可能かどうか検討することを目的とする。岐阜県高山市内の森林内で2〜3週間毎に植物由来の有機エアロゾルを採取し、植物ワックス由来の炭素数C_<14>-C_<32>直鎖脂肪酸並びに炭素数C_<23>-C_<31>の直鎖炭化水素について定量・δ^<13>Cの測定を行った。脂肪酸、炭化水素の分子組成は、ほぼ季節に関係なく、脂肪酸では低分子ではC_<16>脂肪酸、高分子ではC_<24>またはC_<26>脂肪酸、炭化水素では、C_<27>またはC_<29>が主要な成分であった。C_<16>脂肪酸は、C_<24>,C_<26>脂肪酸に比べて、7-8倍の存在量を示していた。脂肪酸(低分子・高分子)、炭化水素の濃度により加重平均したδ^<13>C値は、低分子脂肪酸では、植物の生育期の初期から中期にかけて低いδ^<13>C値(-28‰前後)を示し、生育期後期において高いδ^<13>C値を示した(-26‰前後)。その振幅はおよそ2‰であった。一方、高分子脂肪酸、炭化水素のδ^<13>C値は、若干夏期に高い傾向は示すものの、振幅は1‰と小さかった。上記の脂肪酸、炭化水素のδ^<13>C値を用いて、生態系レベルでのΔ値の推定を行った。植物ワックス、特に低分子脂肪酸のδ^<13>C値から推定したΔ値は明瞭な季節変化を示し、その変化は渦相関法により求めたNEPの季節変化の傾向と同様のパターンを示した。本研究結果は、有機エアロゾルを用いたΔ値の推定が、従来行われてきた大気CO_2を用いる方法に比べて、より植物の一次生産を反映したΔ値の観測が可能であることを示す結果とも言える。
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