2006 Fiscal Year Annual Research Report
亜熱帯性害虫オオタバコガの温帯への気候適応に関わる休眠特性と地球温暖化の影響
Project/Area Number |
05J54182
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
清水 健 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 気候適応 / 季節適応 / 休眠 / 越冬 / オオタバコガ / タバコガ / 地球温暖化 / 発生予察 |
Research Abstract |
1.1994年の多発生から現在にかけて、日本で発生するオオタバコガは亜熱帯性昆虫であると考えられていた。しかし、温帯において採集された個体群においては既に温帯気候区への気候適応が達成されており、亜熱帯個体群と比較して温帯においてより確実に越冬できるような休眠誘導形質が確認された。また、温帯性の種である近縁種タバコガとの間には、主に休眠誘導に際しての低温要求性に関して差があることが明らかとなった。 2.最近、オーストラリアの同種亜種に関する研究おいて、遺伝的構造に地理的傾向が無いことが報告された。大陸であるオーストラリアでは個体群間の遺伝子流動が頻繁に起きていることが示唆される。このオーストラリアで構築された休眠誘導時期の予測モデルを日本でのデータに当てはめてみたところ、予測が高度に当てはまる場合と、実際の休眠誘導が予測よりも早い場合とが確認された。 オーストラリアのオオタバコガ個体群では本研究において確認された亜熱帯個体群タイプが大半を占めること、また、日本の温帯に適応した個体群では亜熱帯個体群において予測される休眠誘導時期よりも早く休眠が誘導されることが予想された。今後、休眠誘導形質における詳細な個体群間比較を検討することが必要である。 3.農業害虫である本種の発生量予察を試みた。ある年の総発生量と相関すると期待されるパラメータ、「当年春の越冬後の発生量」、「当年夏の気温」、「当年夏の降水量」を13府県のトラップデータに関して一般線形モデルに当てはめた。その結果、「当年春の越冬後の発生量」が唯一有意な説明変数であり、これまで考えられていた「高温少雨の夏に本種が多発生する」という傾向は支持されないことが明らかとなった。また、「ある年の総発生量」は「翌年春の越冬後の発生量」に強い影響を与えることも明らかとなった。本種の今後の発生に対する注意の喚起が必要である。
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Research Products
(1 results)