1995 Fiscal Year Annual Research Report
文化財の保存修復に用いられた材料の効果に関する研究
Project/Area Number |
06301010
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Research Category |
Grant-in-Aid for Co-operative Research (A)
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Research Institution | National Research Institute for Cultural Properties, Tokyo |
Principal Investigator |
増田 勝彦 東京国立文化財研究所, 修復技術部, 部長 (40099924)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾立 和則 東京国立文化財研究所, 修復技術部, 研究員 (40249917)
川野辺 渉 東京国立文化財研究所, 修復技術部, 主任研究官 (00169749)
青木 繁夫 東京国立文化財研究所, 修復技術部, 室長 (60088797)
中里 寿克 東京国立文化財研究所, 修復技術部, 室長 (20000458)
宮本 長二郎 東京国立文化財研究所, 国際文化財保存修復協力センター, センター長 (60261252)
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Keywords | 合成樹脂 / 修復材料 / 人工木材 / 人工劣化 / 経年変化 / 施工条件 |
Research Abstract |
(1)主に接着剤などに多用されてきているエポキシ樹脂を試料として、紫外線、温湿度サイクル、加熱、オゾン富化空気などによる人工劣化試料を作成した。人工劣化には極めて長時間を要するために、その期間中安定した劣化環境を実現することが極めて困難で、この環境のばらつきによる影響を排除するために、多くの実験を繰り返し行う必要があることが明らかになった。これに伴い、光と酸素もしくはオゾンを用いる複合劣化実験を開始した。 (2)人工劣化試料と主に各地の寺社などから採取できた経年劣化試料を走査型電子顕微鏡、レーザ顕微鏡、FTIRなどを用いてそれらの物性の比較を行った。その結果、人工劣化手法によって、合成樹脂の劣化機構に経年劣化試料との間に大きな差異があることが判明した。特に、従来のウェザロメータにも用いられている強い光と水の噴射による劣化はごく一部の屋外暴露試料との間にしか良い相関が見いだせなかった。当然のことながら、劣化開始機構も、紫外線やオゾンでは異なり、その影響は、その後の劣化の進行にも大きな影響を有している。このため、単独の劣化源による人工劣化では、実情に即した劣化結果を望みにくいと思われる。 (3)人工木材に用いられている合成樹脂についても同様の検討を行ったが、合成樹脂の物性による影響以上に、マイクロバルーンなどの樹脂以外の添加物の物性と組成・配合比率による影響の方が大きく明確な関連を見いだせずにいる。さらに、その施工条件・施工技術による影響も極めて大きく、試料の物性が十分な範囲にありながら、本体からの脱落などによってすでにその働きを失っている試料も散見された。
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