1996 Fiscal Year Annual Research Report
パイプ状ベンガラ粒子による、縄文から古墳時代の広域的交流についての実証的研究
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06451074
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
永嶋 正春 国立歴史民俗博物館, 情報資料研究部, 助教授 (50164421)
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Keywords | ベンガラ / パイプ状ベンガラ / 赤色顔料 / 漆 / 産地 / 広域的交流 / 縄文時代 / 古墳時代 |
Research Abstract |
発掘調査報告書の検索や、実際に発掘を担当している自治体等に所属する研究者との情報交換を通して、赤色顔料資料の出土状況把握に努め、借用が可能な資料については、蛍光X線分析装置による顔料分析を実施して、ベンガラ(赤色酸化鉄)であるのか、朱(赤色硫化水銀)であるのかを識別した。また大型架台に設置した金属顕微鏡を用いて、資料そのものの表面を直接高拡大(50〜500倍)で観察し、赤色顔料粒子の付着状況や、色調、大きさ並びに粒子形態を捕捉すると共に写真に記録した。本法によってもこれらの詳細が確定し難い資料については、上記の観察結果を参考にして、しかるべき部位から赤色顔料等の資料を採取し、ポリエステル樹脂に埋包固定した後、目的とする方向で切断研磨し、最終的には薄片試料化して検鏡した。このような作業の繰り返しにより、全国的な視野の元で数多くの資料についての情報蓄積を行った。 ベンガラ質岩石の露頭採取資料についても、従前に引き続き調査を進めたが、現時点に於いてもパイプ状ベンガラと認定できる自然露頭は把握できていない。従来から、律令期に入る段階でのパイプ状ベンガラ露頭の枯渇消滅を想定しているのであるが、その後の時代の自然改変や開発行為によって、新たな露頭が出現している可能性に期待して、研究課題終了後も、引き続き丹念な露頭調査を実施していく予定である。 最後に、今年度の調査資料の中で特記に値するものとして、二つの例をあげてみたい。一つは、長野県下の土器の赤彩で、日本では最も古い時代の漆使用例が検出でき、そのかなにパイプ状ベンガラが混和されていたこと、もう一つの例は、熊本県玉名市柳町遺跡出土の木製短甲の赤彩に、パイプ状のベンガラが使用されていたことである。なお本資料からは、この調査の折りに、四世紀初頭の文字が発見されている。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 永嶋正春: "小型深鉢(縄文時代中期)内の赤色顔料について" 神門房下遺跡発掘調査報告書(財)印旛郡市文化財センター. 82-85 (1996)
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[Publications] 永嶋正春: "郡遺跡出土資料に見られる塗装技術について" 郡遺跡群発掘調査報告書II(財)君津郡市文化財センター. 343-345 (1996)
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[Publications] 永嶋正春: "佐倉市吉見台B地点出土の弥生土器(後期)胎土への軽石粒混和と赤彩について" 吉見台遺跡B地点(発掘調査報告書)(財)印旛郡市文化財センター. 86-88 (1997)
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[Publications] 永嶋正春: "川原田遺跡等出土の漆顔料、赤彩資料について" 川原田遺跡(発掘調査報告書)長野県御代田町教育委員会. (1997)
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[Publications] 永嶋正春: "滝沢遺跡等出土の漆顔料、赤彩資料について" 滝沢遺跡(発掘調査報告書)長野県御代田町教育委員会. (1997)