1995 Fiscal Year Annual Research Report
地域社会の高齢化にともなう老人期社会化の変容と再構築過程
Project/Area Number |
06610129
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
大江 篤志 東北学院大学, 教養学部, 教授 (30105069)
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Keywords | 老人期社会化 / 地域社会 / 過疎高令化 / 社会化間相互作用 |
Research Abstract |
地域社会の過疎一老齢化にともなう地域老人層の社会化の構造的変化について現地調査を実施した。対象地域は宮城県江島地域であり、65歳以上人口が60%に達する。この地域の漁業従事者を対象者として、漁業行動の参与観察調査と将来の生活展望に関する面接調査を実施した。その概要は以下のとおりである。 (1)対象地域は、昭和40年代より中学卒業を契機とする青年層の地域外転出、地域漁業の沿岸漁業と遠洋漁業への専門分化にともなう漁業従事青年層の地域外への移動により、過疎一老齢化が進行してくる。 (2)このような中で地域沿岸漁家の家族分離がすすみ、親(老人)世帯が地域に残留し、子ども(青年・成人)世帯が地域外に転出する。沿岸漁家はその後、地域内に後継者を持たないまま老齢化してくる。 (3)それにともないそれまでに維持してきた漁業労働力が低下し、漁種・数量ともに減少してきているが、それは地域漁業従事者の現在の状況への適応ともいえる。 (4)つまり、伝統的な親一子世代による家族経営的沿岸漁業を基本とする従来の老人期社会化の構造は、親一子世帯の分離によって、変化を余儀なくされ、現在は老人層による、しかもこの世代限りの漁業となり、このような生業構造への適応が現在の江島地域の老人期社会化を一方では特徴づけている、といえる。 (5)他方、現在の老人層は、将来は(つまり更に老齢化した時点で)、子ども世帯家族への再統合を展望している。これがあるがゆえに現在の漁業の規模縮小、あるいは年齢適合的漁業従事が彼らの現在の社会化にとり意味を持つといえる。 (6)しかし、すべての漁家が分離家族ではなく、いくつかのパターンがあり、このパターンによって、老人期社会化のあり方に違いが認められる。
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