1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06610197
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
井上 純一 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (90027970)
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Keywords | ポストモダニズム / モダニズム / ジンメル(G.Simmel) / 合理性 / 非合理性 / ジェームソン(F.Jameson) |
Research Abstract |
研究者は本研究を、基本的に三つの枠組みの検討から取り組むことにした。第一は、モデルネの展開と本質を把握すること、第二は、ポストモダニズムの理論による現代社会構造の把握、第三は、第二と関連してポストモダニズムの社会的イメージを、現代映画を素材にして構成することであった。第一に関しては、モダニズムの課題をGeorg Simmelの理論作業に立ち返って検討をすすめた。そこには、すでに現代モダニズムの問題性とポストモダニズムが描く心的表象と重なるものが存在していた。社会学理論から忘れられようとしているSimmel理論を再構成する課題が新たに浮かびあがってきた。第二の枠組みから研究者は、基本的にFrederic Jamesonの指摘する後期資本主義の文化的ロジックとしてのポストモダニズムという理論的枠組みに、ポストモダニズムのみる現代社会構造分析の特徴があると考える。同時にポストモダニズムが、歴史的様式の混成スタイルをもっており、近代的モダニズムの特徴である合理性を越えることを意図していることも明らかになった。そこから第三に関連して、現代映画の分野で描かれる現代社会が、意識的結果ではないけれども近代性を疑い、ポストモダン的社会状況を描きだしていることに注目をした。例えば「ウオール・ストリート」「セックスと嘘とビデオテープ」「テキサス」「ドウ・ザ・ライトシング」は、後期資本主義の非合理的秩序と合理的精神では囲いこめない心的表象世界、そして豊かではあるが孤独かつ感性の喪失をした現代社会のイメージを明るみにだしている。そしてポストモダニズムが、合理性の非合理性への転換を見つめようとするものであることが明らかになった。本研究の成果は、立命舘国際関係研究に発表する予定で、現在執筆作業をしている。なお今後の研究展開としては、第一の課題のSimmel理論の再構成が不可欠だと考えている。
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