1994 Fiscal Year Annual Research Report
九州北西部離島における修験道-平戸諸島の修験寺院の歴史民俗学的研究
Project/Area Number |
06610287
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
福島 邦夫 長崎大学, 教養部, 教授 (60189933)
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Keywords | 安満岳 / 志々伎山 / 中世的修験 / 近世的修験 / 春祈祷(講経) |
Research Abstract |
本研究の目的は平戸諸島における修験道の歴史・民俗を明らかにすることである。平戸島には他の九州の島々と同様に島の北部と南部の二箇所に霊山がある。安満岳と志々伎山である。その両山を中心に史料、金石文、伝承を明らかにすることより、また、修験寺院の伝承、活動などを明らかにすることにより、上記の目的を達しようとするものである。本年度は松浦歴史史料館、および各寺院に伝わる史料の複写、解読をおこない、また、修験寺院の祈祷活動、志々伎山の神社の祭礼調査などを行い、ほぼ次のようなことが明らかになった。多くの不明な点はあるが、中世的な修験の形態は安満岳と志々伎山に残されている。安満岳では行場と考えられる宗法遺跡が見られるし、志々伎山にも伝承があり、また今も、野子部落の住民により、山岳登拝が行われている。志々伎山には上宮、中宮、地の宮、沖の宮が残されており、山の下の野子部落には、円満寺を中心に法印、代官、それに続く、諸役があり、部落全体が特殊な一山組織を形成していたことが知れる。その組織がそのまま、村の諸役や若者組ともなっていた。また、宮の浦部落は地の宮、沖の宮の祭礼を11月に行っているが、現在も、志々伎神社の神主に余り関与しておらず、漁民の中から、定められた、社役中心と子供のまつりであり、山ど祭といった古風なまつりを残すことから、中世的な漁民の信仰の様相を見ることができる。平戸諸島の修験寺院の開基年代は、伝承により非常に幅が広い、英彦山との関係もかんがえられるが、多くの寺院が、近世の始めの開基を伝える。安満岳山麓にはその系統を継ぐと思われる真言系修験寺院が残されている。その主な活動は春祈祷である。それと同格に扱われ、同様の活動を行っているのが天台系盲僧である。こうした民間宗教者の相互関係は不明であり、その解明は今後の課題である。
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