1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06610368
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Fukuyama Heisei University |
Principal Investigator |
丹藤 浩二 福山平成大学, 経営学部・経営福祉学科, 教授 (00102400)
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Keywords | TLG / ペロポネソス同盟 / アイギナ / アイギナ貨幣 / 商人寡頭政 / カラウリア隣保同盟 / 中継貿易 / ピンダロス |
Research Abstract |
キリシア著作家著述資料集成「TLG」および「PHIギリシア碑文集成」のCD-ROM版によって地名、人名、事項名検索を実施、「ペロポネソス同盟構成国データベース」を作成し、これを用いて、ペロポネソス同盟陣営でも特異な存在であるアイギナについて、その「経済と社会」像を再構成した。 1.動員戦力の分析から明らかになる紀元前6世紀〜5世紀前半のアイギナ島の膨大な人口は、商業活動によって維持された。アイギナの経済史を明らかにすることは、ポリスの社会構造の解明にとって重量である。(1)カラウリア隣保同盟の研究からアイギナがアルカイック初期から海賊行為(=海上貿易)を行ってきたきこと、またパウサニアスの記述からペロポネソス半島内で行商活動を行っていたことがうかがえる。(2)古代著作家の記述資料はアイギナが黒海沿岸地方との穀物貿易に従事したことを明らかにする。他方、少なくとも5世紀にはエジプトのナウクラティスを基地とする穀物貿易への関与は否定されるべきである。(3)「アイギナもの」についての古代の評判、これを裏付ける地中海各地での陶器や金属器の出土状況から工業国家アイギナが想定されるが、あくまでも中継貿易国として位置づけられるべきである。(4)近年著しい成果を上げているアイギナ海亀銀貨の研究によれば、アイナギ貨幣の発行を伝説的アルゴス王フェイドンと結びつける定説は否定されるし、貨幣発行の時期も比較的遅く設定されるべきである。 2.アイナギはアルカイック時代から古典時にかけて貿易商人寡頭政が安定して持続した特異なポリスである。(1)神話や伝説の分析によれば、先住民族とアイアコス-族との融合はかなりの程度進んでおり、ポリス内の階級闘争はあまり見られない。有名なデモスの反乱は新興貿易国家アテナイの干渉によって起こった。(2)ピンダロスの賛歌によって宣伝されるアイギナ人の武勇は、重装歩兵戦士による寡頭政の証拠と解釈されるべきではなく、富裕階級のスポーツ愛好と結びつけらるべきである。(3)アイギナは奴隷の生産活動によって支えられていたという意味で奴隷制社会とよばれるべきではない。奴隷はあくまで商品の一部にすぎなかった。
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