1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06610368
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Research Institution | Fukuyama Heisei University |
Principal Investigator |
丹藤 浩二 福山平成大学, 経営学部, 教授 (00102400)
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Keywords | TLG / ペロポネソス同盟 / コリントス / メガラ / アイギナ / 中継貿易 / 寡頭政 |
Research Abstract |
本研究はギリシア著作家著述資料集成「TLG」および「PHIギリシア碑文集成」のCD-ROM版を利用して独自にペロポネソス同盟構成国とデロス同盟構成国のデータベースを作成すること、そしてこれらのデータの外交関係、対立抗争にいかなる影響を及ぼしたのかを考察することを目的としている。 1.ペロポネソス戦争勃発前にペロポネソス同盟の戦争政策に大きく関与した諸ポリスのうち、コリントスは明らかに比較的早くからスパルタの同盟国であった。コリントス、エピダウロス、アルゴス三国相互の対立・抗争あるいは連携・連合、さらにはアルゴスとスパルタの宿命的対立がコリントスをスパルタと結びつけた。メガラの存在がコリントス=アテナイ関係に影響した点も重要である。 2.メガラにとって地理的にコリントスとアテナイに挟まれているという点が最も重要な歴史的要因である。6世紀前半のサラミスを巡るメガラとアテナイの対立・抗争がメガラをスパルタに結びつけた思われるが、5世紀中葉のメガラはむしら親アテナイ的であり、メガラは常に両同盟から一定の距離を置いて独自路線を歩もうと努力したようである。 3.アイギナについては、一般にペロポネソス同盟の同盟国であったと信じられているが、古代の資料にはその明白な証拠が見いだせない。これはアイギナが7世紀以後のアルゴスとの強い結びつきに関係がある。メガラがアテナイとの領土争いに敗れた後、おそらくペイシストラトスの支配下でサラミスにアイギナ系に人々が定住したということも注目に値する。しかし、6世紀末、アイギナはアテナイと半世紀に及ぶ断続的な対立関係に入り、前半のアルゴスの支援、後半のスパルタの支援にもかかわらずアイギナはアテナイに征服された。 4.以上ペロポネソス同盟構成国ないし同盟国であることが自明のものと考えられてきた三国が、いずれも植民国家ないし海運国家であったことが同盟(むしろ盟主スパルタ自体)に対する三国の発言権を強めたことは疑いの余地がない。しかし、三国の対スパルタ、対アテナイ政策の違いは、コリントスが植民国家=海運国家、メガラが植民国家、そしてアイギナが三者の中では比較的遅れて地中海貿易に進出した海運国家であったという性格の違いと深い関連があるように思われる。三者の中ではアイギナがもっとも安定した長期にわたる寡頭体制を維持したという点も注目される。有名な貿易品目であるコリントスの陶器やメガラの外套と比較するとき、いわゆる「アイギナもの」はアイギナ商人の取り扱い品であって、必ずしもアイギナ製品を意味しない。したがって、アイギナはコリントスやメガラのようには工業に依存していなかった。それゆえデモスの台頭を見なかったという点で安定した体制の維持に貢献したのであるが、他方中継貿易の比重の高さが人口増加の抑制をもたらし、最終的な国力の停滞を招いたと考えられる。
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