1996 Fiscal Year Annual Research Report
民具調査からアプローチする西日本における牛馬耕の展開の史的研究
Project/Area Number |
06630064
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
河野 通明 神奈川大学, 経済学部, 教授 (00260985)
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Keywords | 犂 / 牽引法 / 馬耕 / 加賀藩改正法 / シ-ボルト / 四季耕作図 / 絵馬 / 久隈守景 |
Research Abstract |
1.これまで研究の手薄だった四国地方を中心に,博物館・資料館を調査し,(1)西日本の在来犂の分布の概要を明らかにし,(2)瀬戸内地方の牛に首木を使わず鞍だけで犂を引かせる地域に分布する首輪について,それが胸繋から進化したものであることを呼称から確認することができた。(3)これらは研究成果報告書『民具調査からアプローチする西日本における牛馬耕の展開の史的研究』(1997)に述べた。 2.石川県金沢市の大野湊神社の農具模型を調査し,(1)それは加賀藩3代藩主前田利常が改作法の実施の成功を祈願して奉納者したものであり,(2)加賀地方の馬耕は中世以来の伝統ではなく17世紀の前半に藩の政策として導入されたものであることを明らかにし,(3)論文「大野湊神社奉納雛形農具と加賀の馬耕」(1995)として発表した。 3.江戸時代の和書に描かれている農具図を調査し,(1)19世紀中頃にイギリス人が広東で出版した『チャイニーズレポジトリ-』誌に出ている清代の農具図が,実は日本の『訓蒙図彙』によるものであったこと,(2)広東の雑誌編集者のもとには10種の和書が集められており,その中に『訓蒙図彙』が含まれていたこと,(3)和書流出には3つのルートがありその1つは長崎に存在したシ-ボルトによるものであることを明らかにし,(4)論文「『チャイニーズ・レポジトリ-』誌所載 清代農具図の再検討」(1996)として発表した。 4.福井県武生市日野神社の耕作図絵馬を調査し,(1)それは四季耕作図の作者として知られる久隈守景の四季耕作図屏風と図柄が共通し,(2)両資料に共通する祖本が存在したであろうこと,(3)その祖本は久隈守景の作であり,(4)それは図巻の形式をとっていたことを明らかにして復原素案を作成し,(5)論文「越前日野神社耕作図絵馬と久隈守景」(1997)として発表した。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 河野通明: "「大野湊神社奉納雛形農具と加賀の馬耕」" 神奈川大学経済学会紀要『商経論叢』. 31巻1号. 41-84 (1995)
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[Publications] 河野通明: "「『チャイニーズ・レポジトリ-』誌所載 清代農具図の再検討」" 神奈川大学日本常民分化研究所論集『歴史と民俗』. 13号. 79-114 (1996)
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[Publications] 河野通明: "「越前日野神社耕作図絵馬と久隈守景」" 神奈川大学経済学会紀要『商経論叢』. 32巻4号. 1-58 (1997)