1994 Fiscal Year Annual Research Report
3価リン化合物の求核反応に対する機構の再検討(一電子移動機構の可能性)
Project/Area Number |
06640707
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Tezukayama College |
Principal Investigator |
安井 伸郎 帝塚山短期大学, 家庭生活学科, 教授 (50149720)
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Keywords | 3価リン化合物 / カチオンラジカル / 一電子移動 |
Research Abstract |
本研究の目的は、3価リン化合物Z_3Pと求電子剤との反応の機構として、前者から後者への一電子移動を含む多段階機構が可能かどうかを探るものである。この機構の妥当性を検証するために、本年度では想定される中間体である3価リン化合物のカチオンラジカルZ_3P^<+・>反応性を明らかにすることを試みた。 一連の3価リン化合物とジアゾニウム塩との反応を行い、生じるカチオンラジカルZ_3P^<+・>の反応性を検討した。すなわち、トリフェニルホスフィンPh_3P、ジフェニルホスフィナイトPh_2P(OR)、フェニルホスフォナイトPhP(OR)_2(環状ホスフォナイトを含む)、およびホスファイトP(OR)_3をジアゾニウム塩と反応させ、3価リン化合物から生じる最終生成物を詳細に比較吟味した結果、カチオンラジカルZ_3P^<+・>はカチオン種としてもラジカル種としても働くという二面的な反応性を示すこと、そしてこれらの反応性の相対的な大きさは中心リン原子上のスピン密度に強く依存していること、を明らかにした。 一方、ホスフィン類が暗所でメチルビオロゲンによって効率よく一電子酸化され、この過程でホスフィンから生じるカチオンラジカルR_3P^<+・>は系内に共存するアルコール、チオール、ピリジン誘導体などの求核剤と速やかにイオン的に反応することを見いだした。ここで、生成するメチルビオロゲン還元体の増加を分光光度計で追跡し、速度式から理論的に導かれる増加曲線との比較を回帰法によって行うことにより、R_3P^<+・>と求核剤とのイオン反応の速度を定量的に評価することに成功した。その結果、この素反応の速度は求核剤の立体的な因子だけでなく、電子的な要因にも支配されていることを明らかにした。このことは、炭素中心カチオンラジカルの求核剤との反応では求核剤の立体的かさ高さがその速度を支配しているという事実と対照をなす。
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