1996 Fiscal Year Annual Research Report
3価リン化合物の求核反応に対する機構の再検討(一電子移動機構の可能性)
Project/Area Number |
06640707
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Research Institution | Tezukayama College |
Principal Investigator |
安井 伸郎 帝塚山短期大学, 家庭生活学科, 教授 (50149720)
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Keywords | 3価リン化合物 / カチオンラジカル / 一電子移動 |
Research Abstract |
本研究の目的は、3価リン化合物Z_3Pの求電子剤とのイオン反応が前者から後者への一電子移動を第一段階とする二段階過程で進行する可能性を検証するものである。この機構のそれぞれの段階に関連して、(1)Z_3Pからの一電子移動のエネルギー論、(2)想定される中間体であるカチオンラジカルZ_3P^<+・>の反応性、の2点につき、それぞれ検討した。 (1)について:光励起されたルテニウム(II)錯体を電子受容体として用い、Z_3Pからの一電子移動過程を速度論的に解析した。Z_3Pからの一電子移動速度をZ_3Pの酸化電位に対してプロットしたところ、脂肪族および芳香族の両タイプの3価リン化合物について単一の直線で良い直線関係が得られた。このことは、脂肪族アミンと芳香族アミンからの一電子移動速度がその酸化電位とそれぞれ独立に直線関係を示すという観測と対照をなすものである。すなわち、アミン類とは異なり、芳香族3価リン化合物においてはリン原子上の孤立電子対の電子が隣接芳香環へ余り非局在化していないことが示唆された。 (2)について:ジアゾニウム塩による一電子酸化あるいは陽極酸化という手法によりZ_3PからカチオンラジカルZ_3P^<+・>を発生させ、さまざまな試剤と反応させて生成物分析を行った。その結果、Z_3P^<+・>は、アルコールとの間で容易にイオン反応を起こす一方、オレフィンなどのラジカル捕捉剤ではほとんど捕捉されないことが分かった。このことから、Z_3P^<+・>はラジカル性よりもカチオン性を強く示す化学種であることが明らかになった。しかし、酸素雰囲気下、求核剤のない場合には酸素をラジカル的に捕獲したと考えられる生成物が得られた。このことは、Z_3P^<+・>がやはりラジカルとしての性質をも有していることを示している。
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