1995 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト・ヒスチジン脱炭酸酵素遺伝子の発現調節とヒスタミン合成制御機構の解明
Project/Area Number |
06670097
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Research Institution | TOHOKU UNIVERSITY SCHOOL OF MEDICINE |
Principal Investigator |
大津 浩 東北大学, 医学部, 助手 (60250742)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山内 広平 岩手医科大学, 助教授 (20200579)
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Keywords | ヒスチジン脱炭酸酵素 / 肥満細胞 / 血球分化 / 転写制御 / 細胞特異性 / 転写因子 |
Research Abstract |
私たちは,ヒスタミンの合成酵素であるヒスチジン脱炭酸酵素(HDC)遺伝子の転写調節機構を研究しているが,その中で次のような現象が明らかとなった. 1.ヒト・HDC遺伝子の上流5.8Kbとルシフェラーゼ遺伝子の融合遺伝子を作成した.その後,種々の欠失変異体を作成し,肥満細胞株HMC-1,好塩基球細胞株KU-812-F,前骨髄系細胞株K562,子宮頚癌細胞株HeLaに遺伝子導入し,プロモーターの活性を評価した.その結果,HeLaとそれ以外の細胞系では基本転写機構が明らかに異なっていた.すなわち,HMC-1, kU-812-F, K562など血球系の細胞ではHDCの発現にGC boxを含む配列が基本転写に重要であるが,上皮系の細胞(HeLa)ではGC boxを含んだプラスミッドを導入しても全く転写活性化能はなく,上記の血球系との間に基本的な転写機構の差異を認めた.また,上流ばかりでなく遺伝子全領域に渡って欠失変異体を作成し,ルシフェラーゼ遺伝子の下流に挿入したが,この領域内に明らかに細胞特異性を示すところはなかった.ただし,HDCの発現には基本的に上流52bpから57bpに存在するGC boxが重要であり,この領域を欠くと転写が起こらなくなる事が解明された.また,この領域内にオリゴヌクレオチドを用意し,ゲル・シフト法で結合蛋白を調べたところSp1であることがわかった.従って,HDCの転写には基本的にSp1が必要とされることが判明した. 2.マウス肥満細胞腫由来の細胞株であるP815細胞は,同系マウスBDF1の腹腔内で腫瘍性に増殖する.増殖した肥満細胞は顆粒内プロテアーゼの一種であるMMCP-6やHDC遺伝子を発現し始める.この分化過程において同時にいくつかの転写因子の遺伝子発現の変化を観察した結果,NF-E2と呼ばれる赤血球系で詳しく研究されている転写因子群が大きく変化していた.また,NE-E2の発現ベクターとマウスHDC遺伝子のプロモーターとルシフェラーゼとの融合遺伝子をいれたプラスミッドを同時にうずらの線維芽細胞であるQT-6に遺伝子導入すると,ルシフェラーゼ活性が変化したためNF-E2とHDC遺伝子の発現に直接的な関係があることが示唆された.
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[Publications] Yamauchi, K. et al: "Molecular Biological Aspects of Human L-Histidine Decarboxylase" Advances in the Biociences. 89. 177-196 (1993)
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[Publications] Yatsunami, K. et al: "Structure of the L-histidine decarboxylase gene" J. Biol. Chem.269. 1554-1559 (1994)
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[Publications] 大津浩 他1名: "GATA因子によるマスト細胞の分化制御" 造血因子. 6. 134-141 (1995)