1994 Fiscal Year Annual Research Report
慢性肝疾患における肝血行動態の修飾因子としてのエンドセリン
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06670543
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森安 史典 京都大学, 医学部, 助手 (80191055)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中尾 一和 京都大学, 医学部, 教授 (00172263)
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Keywords | エンドセリン / 門脈圧亢進症 / 慢性肝疾患 |
Research Abstract |
成人の末梢静脈血中endothelin濃度(ET-1様免疫活性)は、健常者群、慢性肝炎群、肝硬変群、肝細胞癌群では各々、11.3±0.7pg/ml、14.9±1.0pg/ml、17.8±1.3pg/ml、18.8±1.8pg/mlであり、健常者群に比べて、肝硬変群や肝細胞癌群で有意に高値を示すことが確認された。腹部血管造影時の採血結果では、門脈、脾静脈、上腸間膜静脈のET濃度は各々、34.0±5.0pg/ml、38.3±5.4pg/ml、35.1±6.3pg/mlであり、肝動脈(17.8±1.3pg/ml)、肝静脈(22.8±3.1pg/ml)や末梢静脈(16.5±2.0pg/ml)に比べて1.5〜2.5倍ぐらい高値を示していた。同時に測定した肝静脈楔入圧は19.6±9.2mmHgと上昇しており(自由肝静脈圧は4.4±1.8mmHgと正常値)、体循環の血圧上昇を伴わずに門脈圧亢進状態を示していた。小児肝移植症例では、術前の末梢静脈血中ET濃度は、34.3±4.3pg/mlと著明に上昇し、同年齢者と比較して約2倍高値をとるのに対し、術後の安定期ではほぼ正常域(16.8±1.3pg/ml)に低下していた。肝移植術中の測定では、前記の腹部血管造影時の採血結果と同様に、自己肝摘出前の門脈血中ET濃度は、肝動静脈に比べて有意に上昇していた。 肝類洞の微小循環がET-1による伊東細胞を介して調節されているという報告等と今回の測定結果を考え合わせると、門脈圧亢進症では、門脈血中で増加しているET-1が類洞収縮を介して門脈圧の上昇、さらには側副血行路の形成に関与している可能性があり、末梢静脈血中endothelin濃度の増加は門脈血中のそれを反映していると予想される。また、門脈血中に増加しているendothelinは、脾臓および腸管の双方に由来している可能性が示唆された。
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