1994 Fiscal Year Annual Research Report
頭頸部腫瘍に於ける癌抑制遺伝子の研究-P53遺伝子の臨床応用-
Project/Area Number |
06671734
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
吉田 知之 東京医科大学, 医学部, 講師 (10201857)
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Keywords | 癌抑制 遺伝子 / 頭頚部癌 / In situ hybridization / PCR |
Research Abstract |
1.頭頸部悪性腫瘍パラフィン包埋標本から採取したDNAをtemplateとしPCRをおこないP53点突然変異をdirect sequensingするとともに、主要蛋白のP53変異をcordする部分での腫瘍抑制機能の非活性化を検討した。その結果、(1)下咽頭癌ともras遺伝子と同様にP53の変異が確認された。(2)喉頭及び舌・口腔の前癌状態のものではP53変異を示したものはなかった。2.前癌状態から発癌までの各時期の採取組織切片を利用して舌・口腔癌、咽頭癌、喉頭癌についてP53モノクローナル抗体を使用した病理組織的な検討とPCR法によるP53の点突然変異の検出感受性を比較するしたところ、(1)癌化したものについては何れも検出されたがその陽性率には差が見られた。(2)P53モノクローナル抗体を使用した病理組織的な検索では前癌状態のものや異型の強いものでは正常に較べて陽性率が高値であった。3.In situ hybridizationにてm-RNAの増幅を細胞レベルで見ることにより発現部位を同定するとともに、PCR-In situ hybridizationにて感受性を増幅した。(1)In situ hybridizationにて検出が不可能であった病例や前癌状態のものでもPCR-In situ hybridizationにより検出可能になったものが見られた。(2)しかし、PCR-In situ hybridizationだけではP53の腫瘍抑制機能の非活性化を証明できなかった。4.P53の非活性化と臨床的予後との関係を検討した(1)喉頭声門癌ではT病期とともに陽性率が増加、T1aとT1bの間で陽性率に差がみられた。(2)咽頭癌では局所再発や遠隔移転のみられたものには陽性率が高い傾向を示した。(3)咽頭癌では化学療法の効果の少なかったものに陽性が多い傾向がみられた。変異p53の発現は分子生物学的パラメータとして、臨床的な癌治療の指標に有用となるものと考えた。これらの結果は、日本耳鼻咽喉科学会総会、頭頸部腫瘍学会総会にて報告し、日本耳鼻咽喉科学会誌に現在投稿中である。
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