1995 Fiscal Year Annual Research Report
含フッ素シランカップリング剤による繊維の表面フルオロアルキル化
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06680036
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Research Institution | OSAKA CITY UNIVERSITY |
Principal Investigator |
川瀬 徳三 大阪市立大学, 生活科学部, 講師 (60152956)
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Keywords | シランカップリング剤 / ESCA分析 / 耐溶剤性 / 表面改質 / 表面自由エネルギー / 撥水・撥油性 / シロキサンネットワーク |
Research Abstract |
一鎖型および二鎖型シランカップリング剤を使用して,各種温度および処理時間の熱処理によるPETフィルムを改質した結果、PETのTg点である80℃以上であれば表面自由エネルギーはγ_s^b=9〜12mN/m,γ_s^p=3〜8mN/mにまで大きく低下し改質効果は殆ど一定となり,時間も5分で十分であった. 表面のESCA分析で,C_<15>スペクトルにおいて基質PETに由来するC=Oに帰属される289eVのピークが明確に認められた.この事は,シラン層の厚みはESCAの深さ情報の極限である50Åよりも浅いことを示しており,数分子層のシロキサンネットワークと考えられる. 本改質は耐薬品性に非常に優れ,ドデカン,キシレン,酢酸エチル,テトラクロルエチレンなどの有機溶剤および酸に浸漬放置をしても表面自由エネルギーおよびESCAスペクトルには変化が認められない.フロン系溶剤に長時間浸漬すると撥水性には殆ど変化の無いものの撥油性の明らかな低下が認められた.ESCAより,クラスター度の低いシラン成分の溶解除去に伴う表面フッ素量の低下が原因と考えられる.しかし,シロキサン結合はアルカリに弱く,短時間の浸漬でもシラン層のSi-O-Siネットワークが加水分解により破壊され,ESCAより表面フッ素量の低下は著しく,表面は大きく極性化(γSpの増大)され撥水性は低下したが,撥油性の低下は殆どなかった. これらの事から,シランカップリング剤の表面吸着や表面での強固なシロキサンネットワーク被膜形成あるいは表面に僅か存在する水酸基などの極性基との化学結合によるのではなく,熱処理によりシラン剤の-CH2CH2-部分がPETにアンカリング固着するのが改質機構であることが分かった.
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