1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06680257
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
片村 恒雄 高知大学, 教育学部, 教授 (20194772)
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Keywords | 国語国字問題の研究 / 明治30年代の国語教育 / ドイツ留学中の学校視察の報告書 / ドイツと日本の国語教育 / 言語の教育 |
Research Abstract |
平成7年度の当初の研究計画・方法は、大きく分けて、「1、保科孝一の国語教育論の成立から、展開に至る資料の収集、分析、考察を行う」ことと、「2、保科孝一の国語教育論の展開に関する研究の基礎的作業を行う」ことの二項目であったが、平成7年度の「研究実績の概要」としては、本年度の研究の主要な部分を形成する第1項を中心として報告することとし、第2項については、資料の収集整理に係わる作業を行ったことを報告するにとどめておく。 本年度は、まず明治30年代から明治44年の欧州留学に出発するまでの期間における、保科孝一の国語教育論の成立過程についての考察を試みた。保科孝一は、言語学者、国語学者としての言語研究と、文部省図書課の嘱託としての国語国字問題の研究、明治30年代の国語教育の実情視察の体験などから、自身の国語教育論を徐々に形成していったことが明らかになった。 次に、ドイツ留学中の学校視察の報告書である『独逸国内各都市の小学校における国語教育に関する報告』(文部省発行)の分析、考察を行った。分析、考察によって、保科孝一が日本とドイツの国語教育を比較して、日本の国語教育の欠陥や進歩の不十分なところを指摘していることが判明した。この両国の国語教育についての相違点の指摘は、保科孝一自身の国語教育についての考え方を示すと共に、日本の国語教育の改善の方向を指し示していて、極めて貴重な報告となっている。 さて、以上の分析考察の次に、保科孝一の留学後の著作である『国語教育及教授の新潮』、『最近国語教授上の諸問題』等の分析、考察を行った。考察を通して、保科孝一が、自らの国語教育論を、各国の国語教育の実況を視察研究することによって実践的な性格のものに作り上げていくと共に、国語教育を言語の教育として明確に位置づけて、その教授法に対して研究を深めていったことが明らかになった。
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