1994 Fiscal Year Annual Research Report
対外的危機と討幕派の形成の関連について〜信州松代藩を対象に〜
Project/Area Number |
06710208
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Research Institution | Osaka Municipal Museum of Art |
Principal Investigator |
佐久間 道子 大阪市立博物館, 学芸課, 学芸員 (20215677)
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Keywords | 御改革 / 政争 |
Research Abstract |
天保期に、藩主が老中・海防掛として幕政に携わり、自藩においても積極的に幕府の政策に同調していた松代藩が、維新時には藩長に次ぐ討幕派の先鋒となった過程を究明することによって、幕藩制解体のメカニズムに迫ることを本研究の目的としている。 そこでまず、本研究ではその第1段階として、嘉永年間におこった一連の失脚事件の具体的解明をめざした。使用した文書は国立史料館所蔵の真田家文書である。 その結果、判明したことは、以下の4点である。 (1)嘉永5〜6年にかけて失脚した人々の中には、軍事関係の職についていた者が相当数含まれている。しかし、必ずしも要職にあった者ばかりではなく、むしろ階層はまちまちで、現在の段階では共通性、規則性を見いだしえない。 (2)嘉永5〜6年からしばらくの間、刷新、一新御改革などという単語が触れなどに用いられるが、特に何かを改めるという風潮は見られない。まして、これまでの政策を批判したりするような文書は見当らない。 (3)しかし、家老であり、藩主の一族でありながら、前藩主治世中にはほとんど公文書に名を表わさなかった真田志摩という人物が、嘉永5〜6年からしばらくの間、政務を担当している。この人物は幕末に藩論を討幕に統一した人物である。さらに、この側近と思われる集団が相談して政務にあたったことが、推測される一連の書簡群が残存している。 (4)(1)、(2)から実際の政策を具体的に検討することが必要だと考え、軍事、財政関係の古文書を撮影し解読にあたっている。解読の結果、詳細が判明すれば、さらに検討を加える予定である。 今回調査した古文書の解読は全て終わってはおらず、したがって得たデータも一部分であるので、詳細については今後さらに検討を加えたい。
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