1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06720024
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Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
近藤 充代 日本福祉大学, 経済学部, 専任講師 (30211915)
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Keywords | クーリング・オフ / 消費者契約 / 意思不全 / 近代市民法 / 訪問販売 |
Research Abstract |
研究の結果、以下のような所見を得た。まず、クーリング・オフ権の理論化のための予備的作業として、同権利の法体系上の根拠および権利行使期間中の当事者間の法律関係等の法的性質に関する従来の議論を整理し、分析を試みた。法体系的根拠に関しては、近代市民法説(原島重義、石田喜久夫、沢野直紀、清水誠ほか)と現代契約法説(清水巌、長尾治ほか)とに整理した。両説は、同権利の前提として、(1)消費者契約における消費者の自由意思に対する阻害状況、(2)現代社会における消費者被害の構造的発生があるという認識では共通する。しかし、その打開策としての同権利に関し、(1)の契約成立過程における意思不全に対する自由な意思形成の回復に重点を置くか、あるいは((1)を前提に)さらに(2)の消費者被害の構造的問題に重点を置くかに相違がある。また、クーリング・オフ権の法的性質に関しては、クーリング・オフ期間中は契約は未成立ないし成立の途中にあるとする構成(=契約未成立説、さらに(1)期間満了とともに契約成立とする理解(浜上則雄、河上正二ほか)、(2)随意権の留保された契約とする理解(田村燿郎)に分類できる)と、期間中、契約は成立しており、いったん成立した契約の解除であるとする構成(=契約解除説、さらに(1)制定法による特別な解除権とする理解、(2)解除条件付契約説(加賀山茂)(3)消費者契約に特殊な解約権とする理解(長尾)に分類できる)に整理できる。前者の契約未成立説では、クーリング・オフ期間中の事業者による消費者への商品等の引渡し義務をどう構成するかに難点があり、後者の契約解除説では前提(=契約は有効に成立)と実態(=消費者の意思不全)との間に矛盾が生ずることは否めない。また、ドイツの割賦販売法、訪問取引法、通信教育法等におけるクーリング・オフ規定についても、立法ごとの規定方法の違いに焦点を当てつつ、同権利の性質について研究した。
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