1994 Fiscal Year Annual Research Report
自由かつ公正競争確保のための消費者集団及び消費者個人の私権の確立と実現の可能性
Project/Area Number |
06720026
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
赤松 美登里 久留米大学, 法学部, 助教授 (40258372)
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Keywords | 独占禁止法 / 民事訴訟 / ドイツ法 / 損害賠償 / 一部無効 / 個別契約 / 実行契約 / 信義則違反 |
Research Abstract |
本研究の目的は、自由かつ公正な競争の確保のために私人が果たすべき役割が大きいことに鑑み、この局面での民事訴訟の促進を実体法と訴訟法の両面からサポートするための解釈論並びに法制度の構築を目指すことである。私人が民事訴訟を起こす場合、独禁法に違反する法律行為の無効を主張して違法な拘束から解放されることによる救済を受ける場合と独禁法違反理由に不法行為に基づく損害賠償を請求する場合とがある。後者の多くは別稿で明らかにしたので、本年度発表論文では、前者を中心に、別稿に引き続いてドイツ法へのアプローチに依拠し、検討した(なお両問題につき私法学会で個別報告する機会を得た)。その結果、独禁法に違反する法律行為の無効は、1.無効とされる法律行為の確定、2.無効の及ぶ範囲の画定(一部無効と後続契約の有効性の問題とに区別される)、3.無効と抗弁と信義則との関係とに分けて論じるべきであり、1.については独禁法に違反する法律行為は原則としてすべて無効とすべきこと、2.については無効の及ぶ範囲は違反した規定の趣旨に従って判断され、一部無効については契約の一部が無効とされる場合、当該規定の趣旨からその一部が契約全体と分離できない場合には契約全体が無効とされること、後続契約については無効な合意そのものを実行する契約(実行契約)は無効とされるが、違法な合意で決められた内容を第三者との契約の中に受け入れる契約(個別契約)には無効の効果は及ばないこと、3.については無効が独禁法違反によるもの、また当該契約条項自体は独禁法に違反しないでも独禁法に違反する他の条項と分離不可能であるために無効の効果が及ぶ場合にも無効の抗弁は信義則に反しないと解釈すべきことを明らかにした。なおこの論文は本研究の一部であり、現在、不正競争防止法をも射程に入れ、特に消費者や消費者団体による民事訴訟を中心とするスイス、EU法等との比較検討を継続している。
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Research Products
(1 results)