1994 Fiscal Year Annual Research Report
傷により活性化される植物の46kDaプロテインキナーゼの精製と構造解析
Project/Area Number |
06740594
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
宇佐美 昭二 名古屋大学, 理学部, 助手 (80242816)
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Keywords | 植物 / 傷 / 細胞増殖 / プロテインキナーゼ / シグナル伝達 |
Research Abstract |
傷は植物にとって直接的、かつもっとも頻繁に受ける環境ストレスの一つである。また、傷ついた部位の細胞増殖を誘発することから、細胞増殖の制御の点からも重要な環境要因である。我々はタバコを用い、成熟葉または茎を切除するだけで一過的に活性化される。大きさが46kDaのプロテインキナーゼが存在することを見いだし、その活性化と、植物における傷応答ならびに細胞増殖の制御との関連、さらに植物個体における機能を明らかにすることを最終目的に研究を行っている。本年度はこの46kDaキナーゼの生化学的な機能及びそのタンパク質の一次構造を明らかにするためにプロテインキナーゼの分離、精製を行ってきた。当初の予定であった二次元電気泳動法による微量精製法は、植物細胞には使えないことが明らかとなり、現在、大量精製法による精製を行っている途中である。大量精製に先立つ予備実験の結果、1、シクロヘキシミド処理により恒常的に活性化されること、2、この46kDaキナーゼがセリンまたはスレオニン及びチロシンのリン酸化によりその活性が制御されるMAPキナーゼの一種であると予想されること、3、等電点が5.8前後の複数の分子種が存在すること、4、植物細胞のカルス化に伴い、恒常的に活性化されるようになること等を明らかにした。これらの結果は、この46kDaキナーゼがストレスと細胞増殖の両方に関連している可能性を支持するとともに、傷を刺激としたMAPキナーゼカスケイドの存在を示唆している。植物におけるMAPキナーゼは候補となる遺伝子はいくつかとられているものの、活性化機構及びその活性化を誘導する刺激の明らかとなったものは今までにとられていない。この46kDaキナーゼが精製され、構造解析が進めば、植物で機能の明らかになった最初のMAPキナーゼとなる可能性がある。
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