1994 Fiscal Year Annual Research Report
準結晶の塑性変形-転位を含む構造転移のシミュレーション
Project/Area Number |
06750671
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Research Institution | The Open University of Japan |
Principal Investigator |
堂寺 知成 放送大学, 教養学部, 助教授 (30217616)
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Keywords | 準結晶 / 塑性変形 / フェイゾン / ランダム タイリング / コンピューター シミュレーション |
Research Abstract |
1 金属学の常識として、大変形には転位の介在が必要とされる。しかし、本研究の過程において、転位に関わりなく、準結晶特有のフェイゾン欠陥のふるまいそのものが、大変形に本質的役割を果たしうることを発見した。従って、研究の焦点を、準結晶中の転位から、フェイゾン欠陥のふるまいに軌道修正した。 2 過去にわれわれが示したように、準結晶は高温で、ランダムタイリングと呼ばれる準周期構造に転移しうる。この相では、フェイゾン欠陥が、熱的に激しく励起され、フェイゾンフリップにより、原子移動が起こる。最近、いくつかの実験的研究がフェイゾンフリップによる原子運動の存在を示唆している。また、理論的にこの原子移動によって、原子が準結晶中を自己拡散することが、国外の研究者によって示された。 3 我々は本研究に於いて、この原子移動は、自己拡散だけでなく、集団運動を引き起こしうることを主張した。すなわち、原子の流れと大規模変形が起こりうる。今まで、ランダムタイリングについては、フェイゾン空間での特徴が詳しく研究されてきたが、我々は新たに実空間での運動に注目し、集団原子運動という極めてランダムタイリングに特徴的な性質を指摘した。実際には、(補助金を受けた設備品を利用した)コンピューターシミュレーションによって、簡単なタイリングモデルで、その動きを観察した。 4 この研究成果の意味するところは、高温での塑性変形の由来を、単に転位だけと考えるのではなく、準周期構造の特徴的性質が関与しているという新たな視点をもたらすことである。研究結果は、第5回準結晶国際会議(フランス、1995年5月)で報告される。
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