1994 Fiscal Year Annual Research Report
肝疾患における薬物代謝動態の変動について-P4502E1 genotypeとの関連-
Project/Area Number |
06770406
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
上嶋 康洋 金沢医科大学, 医学部, 助手 (20184921)
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Keywords | アルコール性肝障害 / 薬物代謝 / P4502E1遺伝子型 / acetaminophen代謝 |
Research Abstract |
肝は薬物代謝の主要臓器であり、障害肝では薬物代謝動態にも変化が生ずると考えられる。肝疾患における薬物代謝能の判定には、肝障害の程度と薬物代謝酵素に関与する遺伝的背景の両面からの評価が必要である。そこで、本研究では健常者とアルコール性肝障害(ALD)患者について、肝障害の進行度とP4502E1(2E1)の遺伝子型を分析し、これらの成績と2E1で特異的に代謝されるacetaminophen(acet)の代謝動態を比較検討した。対象は、ALD患者15例で内訳は微小変化群2例、脂肪肝1例、アルコール性肝線維症8例、肝硬変4例で、対照として非飲酒家の健常人10名についても同様に検討した。2E1の遺伝子型は、Hayashiらの方法に準じてA型、B型およびC型に判定した。Acet代謝は1gを経口投与後経時的に血中濃度を測定し、血中半減期(T1/2)とclearanceを算定し、(clearance/体重)を代謝率として算出した。Acet代謝の検討は禁酒直後に行ったが、一部の症例では、禁酒4〜6週後にも測定し、禁酒に伴う代謝動態の変化についても検討した。健常者でのacet代謝についてみると、T1/2は2E1の遺伝子型による差はなかったが、acetの代謝率はC型で有意に高値であった。ALD患者での、2E1遺伝子型は、微小変化群と肝線維症の各1例がA型で、他はB型であった。Acet代謝はA型ではT1/2、代謝率ともA型の健常人とほぼ同じ値で、B型の非肝硬変例では、A型よりT1/2は短く、代謝率は高い傾向がみられ、B型の健常人との比較でも同様の傾向であった。肝硬変例ではB型およびA型の非肝硬変およびB型の健常人よりT1/2が長く、かつ代謝率が低い傾向が認められた。禁酒により、A型の微小変化群ではacet代謝に大きな変化はみられなかったが、B型では肝硬変の1例を除きT1/2の延長と代謝率の低下傾向がみられた。以上のごとく、健常人での検討から2E1の遺伝子型によりacetの代謝量が異なると考えられ、ALD患者では2E1の遺伝子型による2E1の誘導の差がacet代謝に反映されていると考えられた。
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