1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06770431
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
川名 明彦 東海大学, 医学部・内科学2, 助手 (20224800)
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Keywords | 放射線肺傷害 / 接着分子 / 気管支肺胞洗浄 / ICAM-1 / LFA-1 |
Research Abstract |
【目的】近年、急性肺傷害における接着分子の関与が示されている。本研究では、放射線照射が肺局所に与える急性期の影響を、接着分子に注目して検討した。 【対象と方法】Wistar系♂ラット10匹の左肺に放射線を照射(20Gy)。1週および2週後に、被照射肺の気管支肺胞洗浄(BAL)と凍結組織切片作製をそれぞれ行った。BAL回収細胞と肺組織切片を、抗ラットICAM-1およびLFA-1α抗体で免疫染色し、対象群と比較検討した。 【結果】(1)BAL液中総細胞数は、照射後2週目に、対照群(10.3±0.1×10^4/ml)に比し有意に低下(3.4±0.6×10^4/ml.p<0.01)した。またこの時期に、好中球数の増加、多核の肺胞マクロファージ(AMφ)の出現などAMφの質的変化も観察された。(2)AMφのICAM-1発現率は、対象群(15.0±2.0%)に対し、1週目、2週目ともに有意に増加(31.8±13.7%、43.5±7.5%)していた。LFA-1発現率には変化がなかった。(3)肺組織においては、ICAM-1、LFA-1発現率ともに2週間までの観察では放射線照射による影響は認められなかった。 【考案】以上より、放射線肺傷害の急性期にも、接着分子、特にICAM-1の関与する細胞レベルの変化が生じていることが示唆された。このような急性期の変化が、慢性期の肺の線維化に先行するならば、抗ICAM-1抗体を患者に予防投与することにより放射線肺傷害を軽減する、といった臨床応用に発展すると考えられる。今後は、ラットの実験系を用い、抗ICAM-1抗体の投与で放射線肺臓炎発症予防が可能か否かについて検討していく予定である。
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