1994 Fiscal Year Annual Research Report
重症虚血後の部分的再灌流時に発生する致死的心室性不整脈:抗不整脈剤による検討
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06770529
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
栗山 正己 産業医科大学, 医学部, 助手 (40248563)
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Keywords | 重症心筋虚血 / retrogradeflow法 / 部分的再灌流 / 多電極マッピング / 持続性心室頻拍 / 抗不整脈剤 |
Research Abstract |
(目的)冠攣縮性狭心症では、発作改善時に心室頻拍や心室細動といった致死的心室性不整脈の出現がしばしば見られ、今回の研究では抗不整脈剤投与の有無による検討を行った。 (方法)雑種成犬を用い、retrogradeflow法による20分間の重症心筋虚血後に、部分的再灌流を行ったh群(C群)、心室性不整脈の代表的抗不整脈剤であるlidocaineを虚血前より投与した群(L群)と冠攣縮性狭心症及び頻拍性不整脈に用いられるdiltiazemを投与した群(D群)に分けた。この3群で部分的再灌流時に発生する致死的心室性不整脈に対する作用をおよび心筋層内の興奮の伝播様式の変化を多電極心電図記録マッピング(心外膜、中層、心内膜の3層に48×3=144点)を用いて解析した。 (結果)C群では31頭中9頭に持続性心室頻拍(SuVT:30秒以上持続する単一な形状のVT)が出現し、reentryはSuVTのinitiationに対する関与は認められず、そのmaintenanceに3/9で関連していると思われた。リエントリ-回路を形成する心筋局所では、虚血境界部において高度に障害を受けた興奮伝導が、部分的再灌流により不均一に回復し、ある部位では伝導能を有し、一方ではブロックに陥ってintra-muralなリエントリ-回路のSubstrateの形成に関与している事が示唆された。L群では8頭中6頭に10連発以上のVTが出現し、5頭がVFとなり、D群では9頭中3頭に10連発以上のVTが出現し5頭がVFとなった。L群、D群とも部分的再灌流により障害心筋内での興奮伝導性回復に一定の傾向は認めなかった。 (総括)重症心筋虚血からの部分的再灌流時発生するSuVTの機序としてそのinitiationにはリエントリ-の関与は少ないが、maintenanceに3/9でリエントリ-の関与が示唆され、リエントリ-回路の形成には障害心筋の部分的再灌流による興奮伝導性改善程度の不均一性の関与が示唆された。一方、抗不整脈剤投与による部分的再灌流の興奮伝導性の回復は、臨床用量でのNa、Caチャンネルのブロックを行っても障害心筋内での興奮伝導性回復に一定の傾向は認めず、また抗不整脈剤による致死的心室性不整脈の抑制効果もなかった。
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