1994 Fiscal Year Annual Research Report
培養血管平滑筋細胞およびメサンギウム細胞のカルシウム動態に対するPGI2の効果
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06770877
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
内田 浩之 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助手 (20223563)
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Keywords | 培養血管平滑筋細胞 / PGI2 / 細胞内カルシウム濃度 / 細胞内cAMP濃度 / 細胞膜陽イオン輸送系 / 効果の二面性 |
Research Abstract |
今回私は培養血管平滑筋細胞膜陽イオン輸送系(主にカルシウム動態を中心に)に対するPGI2の効果を検討した。その結果を実験の手順に沿って以下に記す。1.培養細胞の作成:培養血管平滑筋細胞(以下VSMCと略す。)は,WKY由来のものを用いた。研究実施計画に基づき継代培養VSMCを得,quiescent cellの状態にしてこれを用いた。2.細胞内Ca^<2+>測定:1.で得られたVSMCを浮遊細胞とし,これらの細胞にPGI2を作用させ,Fura-2法を用いて,VSMCの細胞内螢光を二波長螢光分光光度計(CAF-100,日本光電)により測定し,両波長(340/380nmと505nm)の比から細胞内Ca^<2+>を算出した。3.結果:培養液最終濃度が10^<-9>〜10^<-7>Mの範囲でPGI2を作用させてみたが,細胞内Ca^<2+>濃度に有意な変化は得られなかった。しかし,同時に測定したcAMP濃度は有意に上昇しており,低濃度のPGI2は,cAMP濃度を上昇させる機序を介して血管拡張作用を惹起している可能性が示唆された。これを確認する目的で,10^<-7>MのPGI2が,他の陽イオン輸送系にどのような影響与えるか調べたところ,有意な差はないもののNa-K pumpを亢進する傾向が認められた。しかし,より高濃度の10^<-5>MのPGI2を用い,同様の実験を行ったところ,PCI2はNa-K pump,Na-H antiportを有意に抑制することが判明し,高濃度のPGI2は,血管収縮作用を呈する可能性が示唆された。したがってPGI2は,高濃度では血管収縮作用を,低濃度では血管拡張作用を示し,その効果には二面性を有することが明らかとなり,極めて興味深い結論を得ることができた。本年度はメンギウム細胞に対する効果を検討するには至らなかったが,以上の研究成果は,第37回日本腎臓学会総会にて発表した。現在同学会誌に投稿準備中である。
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