1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06771381
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
一條 宏明 弘前大学, 医学部・附属病院, 講師 (10213000)
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Keywords | 前庭代償 / 前庭動眼反射 / 温度眼振反応 / 自発眼振 / モルモット / 前庭小脳 / 迷路破壊術 / 前庭神経核 |
Research Abstract |
急性の一側性前庭障害は、発症初期には激しい自発眼振を引き起こすが時間経過とともに減弱して行き、やがて消失する。前庭小脳から健側の前庭神経核への抑制によって均衡が再現されるとする仮説(Stenger,1959)は、初期の健側向き自発眼振や回復眼振をよく説明しうるが、神経生理学的に証明されてはいない。この仮説の妥当性について、迷路破壊術前後の温度眼振反応の変化を検討した。 術前、正常ハートレー系モルモット5匹に対し温度眼振検査を行った。氷水10ml注入法によって右耳の半規管刺激を与えると、前庭動眼反射によって左側向きの眼振が解発される。それを8ミリビデオカメラ(SONY CCD-SC7)を用いて記録し、眼振頻度、眼振持続時間を計測した。 次に局所麻酔し、左側の迷路破壊術を施すと直後より右側向き自発眼振、平衡障害が出現する。特別な薬物投与をおこなわなくとも、しだいに平衡機能は改善し、数日後には自発眼振は消失して前庭代償が完成する。その後右側耳(健側)に術前と同様の手技で温度眼振検査を再び行なった。 術前の温度眼振は、眼振頻度が1.8±0.4Hz、眼振持続時間が18.1±8.2秒(いずれも平均値±標準偏差)であった。一方迷路破壊術後の温度眼振は、眼振頻度が1.6±0.6Hz、眼振持続時間が17.8±8.9秒(いずれも平均値±標準偏差)であった。t検定によって両者を比較したが術前後で有意差は認められなかった。 Stengerの仮説が正しければ、術後の温度眼振反応の減弱が予想されたが、実際には有意な変化はなかった。 この事実から、静的な状態では前庭神経核の自発放電が抑制されているとしても、動的な前庭動眼反射弓全体では前庭小脳以上の高次中枢神経系によって正常と同様な反射に代償されたのではないかと考察された。
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