1994 Fiscal Year Annual Research Report
頭頚部癌におけるcollagenase-mRNAの局在と癌浸潤との相関に関する研究
Project/Area Number |
06771443
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大野 芳裕 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (00223917)
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Keywords | コラゲナーゼ / 頭頚部腫瘍 / ハイブリダイゼーション / 酵素抗体法 / メッセンジャーRNA |
Research Abstract |
I型collagenase mRNA(以下ImRNA)の局在を検討するため、radioisotopeを用いたin situ hybridization法(以下ISH)を施行した。検体は、外科的手術及び生検で得られた頭頚部腫瘍15例及び炎症1例を用いた。腫瘍は頭頚部領域の偏平上皮癌13例、疣状癌1例、乳頭腫1例であり、炎症は上顎洞炎であった。その結果、最も強い発現が見られたのは疣状癌症例であり、良性の乳頭腫症例にも比較的強い発現が見られた。また偏平上皮癌例では、高分化な組織像を呈する3例に発現を認めたが、中分化型及び低分化型を示す例では発現が確認されなかった。炎症例では発現を認めなかった。発現していた部位は、いずれも腫瘍近傍の間質組織であり、炎症性細胞浸潤の見られる部位であった。 また今回、蛋白レベルでのI型collagenase発現を調べる目的で、同抗体を用い酵素抗体法間接法による検討も加えた。その結果、ISHで発現の見られた部位に一致した間質の炎症性細胞に発現を認めたのに加え、ISHでは検出されなかった中分化型及び低分化型偏平上皮癌細胞にも発現を認めた。 以上の結果から、頭頚部腫瘍組織においてISHでは、局所浸潤傾向の弱い間質組織でImRNAが発現する傾向にあると思われた。しかし、蛋白レベルでは分化度の低い腫瘍組織でもI型collagenase発現を認めた点から、ImRNAは、局所浸潤傾向が強くturn overが盛んに行われている腫瘍組織においては、その生物学的発現が見かけ上抑制される可能性が示唆された。
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