1994 Fiscal Year Annual Research Report
ウサギの内リンパ嚢破壊による前庭の機能的および形態学的変化
Project/Area Number |
06771470
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
山口 勝矢 久留米大学, 医学部, 助手 (20191223)
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Keywords | 内リンパ水腫 / 卵形嚢斑 / 半規管膨大部稜 / 電子顕微鏡 |
Research Abstract |
本研究は内リンパ嚢の障害が前庭の機能と形態に対してどのような影響を及ぼすかを調べることを目的とした。 <実験方法> 18羽のウサギの一側内リンパ嚢を閉塞し手術前後に頭位検査、回転眼振検査・湿度眼振検査を行い、前庭機能の変化を調べた。また前庭より卵形嚢斑と半規管膨大部稜を摘出して、その形態学的変化を透過電顕で観察した。 <結果> 1.18例中1例のみに術側への頭位偏奇が認められたがその他には異常なく、回転眼振検査でも全例左右方向の回転眼振に差はなく異常は認めなかった。また18例中7例に術側の温度反応の低下が認められ、内リンパ嚢閉塞により半規管機能が低下したことが示唆された。 2.卵形嚢斑では18例中14例に、術側の有毛細胞、支持細胞の空洞化、ミトコンドリアの膨化、崩壊が認められた。これに対して、コントロールの右耳の卵形嚢斑には、手術例で認められた異常所見は全例認めなかった。半規管膨大部稜では、18例中9例に卵形嚢斑と同様の異常所見が術側に認められた。また、内リンパ嚢の閉塞後の期間が長くなるにしたがって、卵形嚢斑、半規管膨大部稜に組織学的異常を来す例が増加するという傾向は明らかではなかった。 蝸牛の光顕所見としてライスネル膜の伸展を認めた6例中全例に前庭に組織学的異常を認めており、内リンパ水腫をきたしたものに前庭の障害を示す頻度が有意に高いことが示された。 以上より、内リンパ嚢の機能障害は蝸牛だけでなく前庭にも機能的変化及び微細な組織学的変化をもたらすことがわかり、内リンパ嚢は前庭が正常な機能を営む上で重要な器官であることを示した。
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